【副業先進企業に聞く】企業はなぜ副業を容認するべきなのか?10年後、20年後の企業の姿とは

【副業先進企業に聞く】企業はなぜ副業を容認するべきなのか?10年後、20年後の企業の姿とは

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週5フルタイム正社員や副業社員はもちろん、週3正社員・複業としてフリーランスでも活動する「ハーフフリーランス」や業務委託、契約社員、時短、副業社員など、思いつく限りあらゆる働き方のメンバーで構成される副業先進企業・RANA UNITEDグループ(以下、ラナグループ)は、創業20年のデジタル業界で老舗のデザイン会社である株式会社ラナデザインアソシエイツを中核とする、クリエイティブ企業のグループです。

最先端の働き方を実践する企業にヒントを得るために、今回は、常に仕事や働き方を変え続けるラナグループの代表・木下謙一氏から、なぜ働き方の多様性を認めるのかの背景にある思想や哲学、ラナグループでの実際の取り組み方などを伺いました。

<お話をうかがった人>
RANA UNITEDグループ 代表/株式会社ラナデザインアソシエイツ代表取締役CEO/株式会社ラナエクストラクティブ代表取締役 CEO/株式会社ラナキュービック代表取締役/武蔵野美術大学非常勤講師
木下謙一 氏
1969年生まれ。CG、インダストリアルデザインのプロダクションを経て、1997年ラナデザインアソシエイツを設立。90年代半ばのインターネット黎明期よりウェブデザインを手がける。現在では資生堂や大手出版社のデジタル戦略を担当するほか、インスタレーションやテレビ番組用のデータビジュアライゼーションなど、仕事の幅を広げている。 現在はデジタルクリエイティブを中心に据えているが、松任谷由実のCDジャケット、マーチャンダイズも手がけるなど、トータルなクリエイティブディレクションを強みとする。グッドデザイン賞など国内外で受賞多数。武蔵野美術大学非常勤講師でもあり、双子姉妹の父でもある。

その人全部を受け入れたいから、副業もOK

プロフク
「ハーフフリーランス」という名称は、はじめて聞きました。

 

木下代表:ハーフフリーランスは、ラナグループの中でも、「ラナエクストラクティブ」1社が持っている制度です。

プロフク
1社で試験的にやられているという事でしょうか?

 

木下代表:グループの1社で試してみて良ければグループ全体でやっても良いと思っている部分もありますし、グループ会社それぞれの現状に即して制度が違ってもいいんじゃないかなと思っています。

プロフク
率直に、副業や時短、兼業、ハーフフリーランスなどなど、いろいろな働き方を認めるのには、どのような理由があるのでしょうか?副業OKを前提にして起業されるスタートアップの会社はたくさんありますが、御社は老舗でいらっしゃいます。

 

木下代表:副業を最初に認めたのは、3~4年前です。弊社に限らず、将来的に企業は社員の副業を当たり前に認めるようになるんじゃないか、という予測があって、そこへ社員から「副業をやらせてほしい」という要望があって対応したのがきっかけでしたね。

プロフク
それを認めるかたちで、そのうち増えていったということですか?

 

木下代表:そうですね。それに、「副業OK」といって採用の募集もするようになりました。

プロフク
副業を当たり前にやっているような未来になるんじゃないかと思われたのには、何か理由があったのでしょうか?

 

木下代表:弊社はクリエイティブなものづくりをする会社なので、それぞれのメンバーのパーソナリティを含めた、人ありきのお仕事だと考えています。だからありのままのその人が欲しいのに、採用の場面で「副業したい」って言ってきた方に「うちの会社では禁止だからやらないでください」って言ったら、その人を部分的に否定することになって、その人じゃなくなってしまいます。そうすると、弊社としてもなぜその人を採用したのか、意味が薄れてしまいます

例えば、着付けの仕事を土日にしている社員がいます。日本の和装文化とかに非常に興味があって、着付けも習って、そういうことをやってお金も得ているというパーソナリティーも含めて採用しているわけです。「採用したらうちの正社員だからもう着付けの仕事はやめてください」って言ったら、その人のパーソナリティーの一部をばっさり切っちゃうことになるので、そうすると採用そのものに矛盾が生じると思っています

プロフク
「その人」全部を受け入れたいとお考えですか?

 

木下代表:そうです。「その人全部」の方が、パフォーマンスが発揮できるんじゃないかと思っています。その人の能力を100%出してほしいですよね。その方法としては、副業をやめてうちの会社の仕事だけに集中してくださいって言うよりも、副業もOKですよって言ったほうが、むしろその人の能力が100%出るんじゃないかと思っています。

プロフク
広告やクリエイティブの会社では、一般的に労働時間が長くなりがちです。制度的に副業が認められていても、実行するのは難しいのではないかと思ってしまうのですが、実際可能なのでしょうか?

 

木下代表:ラナグループの場合は、最近はそこまで労働時間が長くならないようにしています。たしかに締め切り間際になると、帰宅が終電になってしまうようなこともないわけではありません。でも、やっぱりそれは良くないことなので、なるべく減らそうとしていますし、減らしたいと思っています。

あとは、基本的に勤務日数が週4の正社員や、週3業務委託、契約社員のメンバーもいて、その人はある曜日は副業をしていて会社にいないんですよね。だからきっちり線が引いてあります。そういう意味で両立はできているんじゃないかなと思いますね。

プロフク
色々な働き方のかたがいて、壁はできませんか?

 

木下代表:現場の声を聞いても、全然壁はないですね。それぞれの人生ですから、土日に何をしていようが、週4で働いてそれ以外の日に何をしていようが、その人の自由だと思います

プロフク
これは、多少各社で制度の違いはあっても、グループ全体で共通している価値観ですか?

 

木下代表:はい。社員同士、凄くフラットな形でお互いを見ています。裁量労働制の延長線上にあると思うんですよね。定時制からフレックスタイム制、そして裁量労働制と徐々に進んできたのですが、裁量労働というのは、プロとして成果さえ出していれば良いので、副業をしても何も問題ないわけです。フレックスや裁量労働と徐々に働き方を変化させてきて、その延長線上に副業OKにしているので、溶け込みやすかったのかなと思います。定時が9時5時の会社である日突然副業OKですよって言っても、自分の人生のどの部分に副業を組み込んでいったらいいのか皆さん迷うんじゃないでしょうか。

ラナユナイテッドグループ木下代表

副業が採用ブランディングに与える影響

プロフク
日本の多くの企業では、「副業解禁」にあたって採用ブランディングをどうするかの難題を突き付けられることになりました。御社はもうすでに運用をされていますが、ブランディングとしてはどういうお考えだったのでしょうか?

 

木下代表:弊社は受託の仕事がメインなので、制作物さえよければクライアントにとっては弊社が副業可の会社か否かということはあまり関係ありません。ただ、採用ブランディングとしては良かったと思います。フルタイムでは働けなくても、時短や週3で働きたいという優秀な人材からの応募もありますし、ラナグループはそういう採用ポリシーで働き方も自由な会社だというのがジリジリ浸透しているので。

副業をやりたいという方も応募してくださりますし、自分はやらなくても副業OKだと認識して入ってくる人が多いので、社内であまり対立は起きないですよね。自分とは違う働き方の社員のことも、尊重できるメンバーが集まっています。

プロフク
その前提で入ってきているから、フラットに認め合う関係性になるんですね。

 

木下代表:中途でも新卒でも、ブランディングが浸透すればするほど、ラナグループというのはこういう採用ポリシー、こういう働き方なんだとあらかじめわかっていて来るので、入ったときに「なんでお前副業してるんだ」っていうスタンスにならないですよね。そういう意味でも良いんじゃないかなと思います。

プロフク
逆に、ネガティブな面はありましたか?

 

木下代表:週4だと感じないですが、週3のメンバーになるとコミュニケーション量が満足にとれない部分はどうしても出てきますね。もちろんその分はSlackでフォローしたりもしますが、少ない時間で働いているメンバーのほうが積極的にコミュニケーションを取るようにしてくれるメンバーが多いですね。そういうメンバーの方がうまくいっているような印象があります。働く日数に関わらず同じぐらいのコミュニケーション量がとれるようにしておくと、現場でもうまくいっているようですね。

プロフク
ある程度積極的にコミュニケーションをとろうとする本人側の行動がないと、難しい部分はあるかもしれないですね。

 

木下代表:そうですね。あとは、やっぱりこういう仕事だと、どうしても緊急対応などがあったりするので、ちょうど休みで副業の方に行っていたりするとスケジュール調整が大変になったりとか、オフィスに来る日が少ないと来た日に打ち合わせが集中してほとんど埋まってしまったりとか。

ただ、基本的に副業をやっている人というのは、本業が週何日でも、合計でいったらより長時間働いていると思います。ということは、その人はそのことが好きなんですよね。もちろんお金が必要だからやる人もいるかもしれないですが、好きならあまり辛くないといいますか。

プロフク
好きだからこそできることですよね。

 

木下代表:だからこそ働けますし、プライベートな趣味の時間と仕事の時間はお互いに浸み出していっている気がします。そこが良いとこだと思いますし、副業はそういうライフスタイルが好きな人に向いていますよね。好きなことが明確に自分であって、それだったら長時間やっても苦にならなくて楽しくって、それでお金もらえるんだったらラッキーだと思う人のほうが、弊社のような会社の副業には向いていると思います。

副業が当たり前になった時の企業のありかたと、その先の働き方

木下代表:いまシェアオフィスがすごく流行っていますよね。世の中のすべての企業はシェアオフィス化するんじゃないかと思っています。つまり、ラナグループがやっているのは、要はある種のシェアオフィスなんじゃないかと思うんです。

プロフク
A社所属の方、B社所属の方、C社所属の方がいて、「この場所にいるときはラナさんのお仕事にコミットしている」というシェアオフィスのような状況が、どの企業でも起こっていくと。

 

木下代表:すべての企業はそうなるんじゃないかと思います。副業の人が増えて、50:50の割合で時間も収入も分けるとしたら、どっちが本業かなんてわからないじゃないですか。3つに分けて33%ずつかもしれません。するとその人にしてみると、契約先が3つあるフリーランスで、それぞれオフィスを用意してくれてるから、今日は乃木坂のオフィスに行って仕事をしよう。明日は原宿に行こう。明後日は六本木に行こう、となるわけです。

プロフク
たしかに。

 

木下代表:企業のほうは一応場所を用意します。それに、場所だけを提供するシェアオフィスと違ってプロジェクトも用意してあげます。そこに場所と仕事を求めて人が集まってくる。未来の企業は、全部そんな感じになるんじゃないかなと思いますね。人によって「この会社と長期で契約しよう」とか、「この会社とはこのプロジェクト1本だけにしよう」とかっていうふうになると思うんですよね。

シェアオフィスで入居者同士のコミュニケーションとかがどれくらい機能しているかはわかりませんが、もし仕事も提供してくれたら、シェアオフィスの経営と企業の経営が段々接近して、何ら変わんなくなっちゃうと思うんですよね。

プロフク
予言ですか?

 

木下代表:10年後、20年後の予言です。業種にもよると思いますが。弊社でいま唯一解禁されていないのは、副業の仕事相手を社内に呼んで打ち合わせするとか、副業の仕事を社内でやることです。経済的におかしな話だからという理由ですが、解禁しても良いとも思っています。その代わり、シェアオフィスと一緒なので、その分ちょっと場所代払ってね、という話で。ちょっと払ってくれれば、もう全然副業の相手呼んで打ち合わせしてもいいし、コピーも使っていいみたいな、そういうことになるんじゃないかなと思いますけどね。

いま経済的に会社が目に見えない形で提供してるものってありますよね。オフィスのファシリティとか、立地とか、コンピューターとか、携帯電話とか、社会保険とか、管理部スタッフによるサポートとか。社員であることで、お給料以外のものも受け取っているわけです。

だから、フリーランスの人はまさにそうですが、そういう会社が提供するサービスの部分は逆にお金を払って、その人が出した成果の部分は、その分もっと明確に払うようになったほうが、今後わかりやすいんじゃないかなという気はしています。

プロフク
リモートもしやすいですもんね。事前に頂いたデータによると、ラナグループでは53%の方がリモート勤務の日を作っていらっしゃいます

 

木下代表:そうですね。だから、いま月曜~金曜が平日で、土日が休みになっていますが、その辺の区分も将来的にどんどん緩くなってくると思います。雇用形態の多様化、それにインターネットで、どこに所属しているかといったことは、なくなってくるんじゃないかなと。20~30年先にはまったく違う働き方になっていると思いますね。

プロフク
フルタイム定時制からフレックスになって、裁量労働になって、副業OKになって、その先の未来。

 

木下代表:その先はたぶん、全員フリーランスですよ。アメリカは今すでに労働人口約1億6,000万人にたいしてフリーランスが5,000万人以上いて、3人に1人くらいはフリーランスですからね。日本はまだ20%弱程度ですが、副業の先にはそういう未来図があると思います。

プロフク
最後に、ここまでお話を伺っていて、人に向き合うまなざしを強く感じるのですが、根底にある価値観は一体何でしょうか?

 

木下代表:人間は、やはり自由であるべきだと思うんですよね。そして自由である方が、パフォーマンスを発揮できると信じています。だから、社員にあれやっちゃ駄目これやっちゃ駄目というのは矛盾しているので、なるべく自由にしたいと思っています。だから法人としては多くの手間がかかっても、それぞれの人格の個別の働き方の要望に対応しています。

従来型の経営者は自由とパフォーマンスは相反するものだと思っている人が多いと思いますが、みんなを自由にすればするほど作り出す制作物の価値も上がると思っているので、なんとかやりとげたいなと思っています。

プロフク
木下代表、貴重なお話をありがとうございました。副業先進企業が推進している副業の姿は、<責任を伴った自由>でした。「副業」をきっかけにして個人がより大きなパフォーマンスを発揮できるようになったり、企業としてより大きな競争力を持てるようになったりするなど、様々なヒントをいただきました。個人・法人を問わず、副業について考えるきっかけになったでしょうか。そして、副業の次の段階は全員フリーランスの世の中になるのでしょうか…!?

 

ラナグループの皆様、取材させていただきありがとうございました!

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この記事を監修した人

荻久保健一
荻久保健一
執行役員マーケティング本部長:株式会社ホールハート
これからの新しい働き方「副業社員」や「インターン副業」をマーケティングの力で広げるために日々奮闘する美容好きおじさん。
自身も副業でマーケティングアドバイザーやwebメディアを複数運営。
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