by大村昂太朗
カスタマーサクセス人材が市場で求められる理由とは?顧客の成功からすべてを設計する運用モデルを解説
現在「カスタマーサクセス(CS:Customer Success)」という概念に注目が集まっています。直訳すれば「顧客の成功」ということですが、この概念の本当の意味は何でしょうか?
また、なぜビジネスの世界でこの概念が注目され始めているのでしょうか?この記事では、カスタマーサクセスを担える人材が、現在市場で求められている理由について、解説していきます。
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なぜカスタマーサクセスが注目されているのか?
まず大前提として、先進国経済が軒並み高度に成熟化しきっており、生活における物質的なニーズが概ね満たされつつあるという現状があります。
これは、低価格で良質なモノやサービスを入手しやすい環境が、整ってきていることと関係があります。
経済のグローバル化の進展と情報技術の高度化によって、衣食住を含むあらゆる領域で基本的なニーズが満たされやすくなってきているというわけなのです。
しかし、人間の幸せは物質的に満たされたり、利便性・快適性が高まったりするだけでは得ることはできません。
人には誰しも実現したい夢や解決したい課題があるものです。2020年代以降になり、経済は間違いなく、こうした「どうしたら顧客の成功を実現できるのか?」にフォーカスしたものとなっていると言えるでしょう。
つまり、現代社会ではただ単にモノを作って、売ったりサービスを提供したりするだけでは、顧客は満たされない時代になってきているということなのです。
仮に、どれだけ良いモノやサービスを提供できたとしても、顧客がそれを得ても目的自体が達成されていかなければ、離れていってしまいます。この問題を解決するために、企業が行う活動が「カスタマーサクセス」となるわけです。
一例をあげると、「この服が欲しい」を深掘りしてみますと、「自分らしくありたい」や「幸せな人生を創りたい」という根底的なニーズがあり、そこに対して「企業としてどのように向き合っていくことができるか」が求められる時代になってきているわけです。
カスタマーサクセス(顧客の成功)とは、顧客自身が心の奥底に持っている夢の実現(究極のニーズの充足)とも言えます。
したがって、期待通りの満足できるモノが手に入った、期待通りの満足できるサービスを受けられたということによって、簡単に実現されるようなものではありません。
その意味で、Customer Support(カスタマーサポート)やCustomer Satisfaction(カスタマーサティスファクション【顧客満足度】)といった概念とは、似ているように感じられますが実際は全く異なります。
そして今、従来型の単純な「顧客志向」とは、次元の異なる「カスタマーサクセス(顧客の成功)」を目指す企業に生まれ変わろうとしている先進的な企業が、いま一斉に力のある人材を求め始めています。
カスタマーサクセスを目指す企業のありかたとは?
では、カスタマーサクセスを目指す企業は、どのような組織運営モデルに変化していく必要があるのかについて考えてみましょう。
従来、「顧客志向」の企業のモデルは下記のようなものでした。
- ニーズに対応した物を作る/サービスを提供するための準備をする
- ニーズを持ったお客様を探す・増やす・効率的に届けていく仕組みを作る
- お客様一人ひとりをしっかりと理解して個別対応し、購入・契約してもらう
- アフターサポートを徹底的に行い、質問や不満、クレームがあればそれに応える
もちろん、こうした取り組みは現在でもとても大切なものです。マーケティングもCRMもアフターサポートも重要です。しかし、企業は「顧客志向のジレンマ」に陥ってしまうことになります。
「あらゆるお客様のニーズを聞こうとして、個性のない商品ラインナップになってしまった」、「あらゆるクレーマーの声に対応し続ける中で企業体力が疲弊してしまった」。
こういった事例に、直面されたことのある方も多いのではないでしょうか?
お客様に対応し、支援やサービスを行う点では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは共通した部分もあります。
ただ、カスタマーサポートは起きていることやお客様の行動に対応してフォローするもので、お客様の問題や疑問の解決をサポートする行動です。
しかし、同じようにお客様へのフォローをするのでも、カスタマーサクセスの目的は、お客様の目標達成を成功に導く行動です。
「従来型のカスタマーサポートが受け身であるのに対して、攻めの姿勢でお客様に臨むことがカスタマーサクセスである」という捉え方は、その通りではありますが、本質ではありません。
カスタマーサクセスのゴールは単純な「顧客の満足」ではなく「顧客の成功」にあり、顧客の成功につながるかどうかという観点で、顧客との向き合い方を設計していこうという考え方なのです。
もちろん、ビジネスである以上、顧客と向き合い続けることから逃げるわけにはいきませんが、「お客様の声は絶対正しい」とする考え方だけでは、現代の消費者がもっているニーズには応えきることができません。
「自社の製品やサービスに満足してもらう=顧客満足度」をゴールとする企業経営のありかたは、どこまでいっても企業側の自己満足で完結してしまうプロセスなのです。
消費者の根本的なニーズは、1つの企業が提供する商品やサービスを購入するだけでは、解決されないため、真の「カスタマーサクセス」を追求するならば、企業モデルそのものを根底から見直していく必要があります。
カスタマーサクセスを指向する企業となるためには、顧客がその夢を実現させたり課題を解決させたりして、成功を手に入れるまでの一連の連続した「物語」に目を向け、そこに寄り添っていく企業体に根本的に生まれ変わる必要があります。
そして、顧客の成功の物語に寄り添って、最前線に立つ組織こそがカスタマーサクセスなのです。
具体的には、お客様と向き合うすべての仕事を集約して、「自分たちの製品やサービスを活用してもらうため」ではなく、「お客様が成功するために必要なことを全てやる」という考え方で行動するのが、カスタマーサクセス部門の仕事です。
伝統的なビジネスの組み立て方は、まず自分たちの製品やサービスありきで考えて「1億人の中から1000万人のターゲット潜在顧客層を見出し、500万人に網をかけてみると100万人が釣れて、そのうちの半分の50万人に満足してもらい、その後のリピートをしていただく」というような流れがですが、カスタマーサクセスを追求する企業は根本的に違います。
お客様の成功からすべてを設計するのです。まず、1人のお客様の初めての成功体験が生まれ、そこからその成功体験をもとに、別のお客様の成功へとビジネスのつながりが広がっていく。
そうしたビジネス連鎖を作りながら、顧客から市場を生み出していくストーリーを創っていくことこそが、カスタマーサクセスの仕事のミッションです。そのステップは多くの場合、下記のように同じ道を辿っています。
- どうしたら夢が叶うのだろうと悩む(学ぶ、考える)
- 試してみる(挑戦する)
- 試行錯誤を繰り返す
- はじめての小さな成功を体験する
- 軌道に乗せる(成功を再現できるようになる)
- 自分なりのやりかたを確立させる
- 幸せをつかむ(夢を叶える)
このステップを、顧客とともに伴走し、時にコーチングをし、成功までの道のりを共に進んでいくことがカスタマーサクセス部門の仕事です。
カスタマーサクセスを追求する新しい形の企業においては、従来型のマーケティング/営業/顧客サポートといった部門は存在しないことがほとんどです。
顧客と向き合うあらゆる機能を集約し、カスタマーサクセスのための統合部門を設置して顧客と向き合っていくのが基本です。
そして、顧客の成功への道のりに、一丸となって寄り添っていくのです。具体的には、下記のようなプロセスを進めていきます。
- 共に悩む/学ぶ/考える(サポートや学びの材料となる情報や場を用意する)
- 最初の第一歩を手ほどきする(チュートリアルやマニュアルを用意)
- 試行錯誤の手助けとなる提案やアドバイスをする(ヒントや提案をする)
- 成功を成功だと認識する手助け/成功の背景を分析して提示(アクティビティティを横でモニタリングする等)
- それで満足せず繰り返し成功できるように常に新鮮な提案やアドバイスをし続ける
- その人にとってのスタイルを認知/賞賛する(何かしらの形で表彰や報酬を差し上げる)
- その人の幸せを共に喜ぶ(喜びのメッセージを伝える仕組みを考える、喜びの場を用意する)
このプロセスにおいては、もはや会社側の人間とお客様という区別はなくなり、1つのコミュニティとなって成功へ向かっていきます。
求められる能力と適正
求められる能力とは?
顧客が成功に至るまでのプロセスを、どのようにして実現するかを考えることこそが、カスタマーサクセスの仕事なので、典型的な「カスタマーサクセスの仕事はこういうものです」という「型」は存在しません。
ただ、顧客のビジネスを理解することと、主体的に顧客の成功に関わろうとする熱心さを基本的な姿勢として持っていなければなりません。
そのためにも、顧客との信頼関係の構築は必須なため、コミュニケーションスキルが高いことは、カスタマーサクセスを行うための最大の基本と言えるでしょう。
共感力・ストーリーイメージ能力
どのような企業でも、カスタマーサクセスの仕事に従事する人に、共通して求められることは、「お客様の成功までの道のり(ストーリー)を、イメージしてあげられる能力があるか?」「成功したいというお客様の願いに、心底から共鳴・共感できるか?」という2点です。
お客様を数字やデータを駆使して属性で分析して理解したつもりになるだけでは、カスタマーサクセスの仕事を十分に果たすことはできません。
また、お客様が利用するたびに、没入できるユーザー体験(UX)を設計する能力だけとか、お客様のライフスタイル・趣味嗜好性のイメージを、静的に絵に描いただけのペルソナをイメージする能力だけとかでも現実的には不十分です。
例えば結婚のマッチングサービスを利用している人は、サービスを利用できれば良いのではなく、「相互理解・相互尊重できる相手と結婚したい」とか「結婚を通じて幸せな人生を送りたい」から、結婚のマッチングサービスを利用するのです。
フリーランス向けのクラウドワーキングサービスを利用している人は、「フリーランスとしての生活を確立させたい」とか、「自分らしいライフスタイルを実現したい」、そして「個人の名前で仕事がしたい」などからサービスを利用するのです。
こうした、人間が「変わっていく」動的なイメージを思い描くことができるかが求められています。
ひとりひとりのお客様が成功を手にして、動的に変化していくことが、いずれは大きな社会的変化に結び付いていくのです。
仮説をもとに提案・ディレクションする能力
カスタマーサクセスを追求する企業は、ひとりひとりのお客様の成功、ひいては大きな社会的変化の実現をミッション・ビジョンとして掲げているものです。
そのため、カスタマーサクセス部門の担い手は、「社会をこのように変えたい」という企業のミッション・ビジョンを、誰よりも強く理解し、共感し、補強し、そしてその思いをもってカスタマーと交流していくことが求められます。
つまり、カスタマーサクセスの担い手に求められるものは、マーケティングやMA・SFA・CRMソフトウェアの知識や経験、営業や顧客サポートの知識や経験といったことだけではないということです。
データに強いということも、もちろん重要なのですが過去のデータから見えることは過去のパターンでしかないので、それをそのまま成功体験として一般化してしまわないように注意を払うことが、特に重要となってきます。
むしろ、「この方は、こうしたら成功するんじゃないだろうか?」という仮説を組み立てて提案する力の方が、「カスタマーサクセス」の担い手により強く求められる能力です。
すなわち、成功に至るストーリーを描く力、表現力、演出力、構想力、発想力です。
そして、それを具体的なサービス運営に落とし込んでいくためのスキルとしてのサービス運営において、お客様とのコミュニケーションを構築する編集・編成能力、サービス開発において必要な要件を提示していくディレクション能力が必要となります。
社内広報力・リーダーシップ
従来のビジネスでは「いかにその会社が提供する物やサービスに詳しいか」が求められていましたが、カスタマーサクセスの時代においてはそれ以上に、「いかにあるタイプの人たちが抱いている夢、抱えている課題に詳しいか」の方が、より重要な要素になってきています。
自分自身が顧客と同じ立場で、同じ夢や課題を有していることで、信念を持って仕事に従事することができるでしょうから、そうした姿勢で取り組むことがベストと言えるかもしれません。
特に、カスタマーサクセスの組織を率いて、マネジメントする立場の役割の人、もしくは、今までカスタマーサクセス型の企業ではなかった会社を、カスタマーサクセス型の企業にトランジションさせることを期待されているハイレイヤーマネジメントの人材については、その点が特に強く求められることでしょう。
「顧客の成功のためにこの会社は存在しているのです」という意思を、表明していくタイプのリーダーシップと広報力です。
向いている職歴とは?
カスタマーサクセスが最も必要とする能力は、「顧客が自分なりの筋道で上手に使いこなして成功へとたどり着けるように、アドバイス(コーチング)をしてあげる能力」ですから、コミュニティ運営の経験がある人や、先生・指導者の経験がある人(教師・塾講師・講師・コーチ・心理カウンセラー等)は適性が高いでしょう。
場を回すリーダーシップを持っている人は、カスタマーサクセスの仕事に最も向いている人だと言えます。
その観点からは、小さくとも店舗経営を経験したことのある人、ミッション型組織(NPO等)の運営をしてきた経験がある人なども適性が高いでしょう。
また、顧客を成功に導くためのヒントを提供していくアイデア力を持った人という意味では、メディアの世界で文章の編集やコンテンツの編成の経験を積んできた人も適性が高いと言えます。
加えて、「なんのために?」をとことん追求する仕事をしてきた人(コンサルティング会社・シンクタンク・広告代理店等で「考える仕事」を積み重ねてきた人)も、顧客が成功するために何が必要かを考え抜く能力を有していると考えられるため、適性が高いと言えるでしょう。
まとめ
今まで存在しなかった職種なので、そのままズバリの経験者はほとんど存在しない職種ですが、カスタマーサクセスは2020年代以降の経済社会におけるコアとなるコンセプトです。
そのカスタマーサクセスを牽引する仕事に従事して経験を積むことは、きっとあなたのキャリアにとって大きなプラスとなっていくことでしょう。
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