by大村昂太朗
BtoBマーケティングの新しい在り方とは?求められる人材像の変化を解説!
BtoBビジネスは、toC向けのビジネスとは扱う金額の規模感も取引の流れも、大きく異なります。
また、企業間取引のタイプは大きく2つに分かれます。
- タイプA…数千万円から数億円にも及ぶ大きな取引を、限られた数の顧客企業(アカウント)との間でじっくりと時間をかけて成立させていく
- タイプB…数百円~数千円単位の小口の取引を、非常に多くの企業との間で高速・多頻度で積み重ねていくタイプ
このような市場のありかたによって、当然BtoBマーケティングのありかたも異なることになります。
また、昨今の大きな技術革新、経済社会の変化を受けて、BtoBマーケティングのありかたも大きく変化しつつあります。
この記事では、BtoBマーケティングの変化を紐解きながら新しい在り方を深掘りし、これから訪れる本格的なカスタマーサクセス時代のBtoBマーケティング領域で求められる人材像までを解説します。
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目次
2000年頃からの企業間取引のありかたの変化
従来のBtoBマーケティング
最初に、従来型のオーソドックスなBtoBマーケティングのあり方を振り返ってみましょう。
特にタイプB(比較的少額の取引をたくさん発生させる)に特徴的なあり方ですが、
- 見込み顧客企業リストを生成
- コンタクトリストを整備
- 一斉に情報送信
- 反応があった先に営業を送り込む
- 商談
- 必要とあらば値引きをするなどし取引を成立させる
- 営業が御用聞きをしながら関係性を継続させる
- 継続発注を獲得していく
というモデルです。
このモデルにおけるBtoBマーケティングに求められていたことは「営業が活動しやすいような環境整備」であり、営業推進・営業サポート組織のさらに裏側にいて、企業のイメージアップのための援護射撃的活動や、カタログやホームページの整備、営業ツールの整備、といった裏方的な役割が期待されたものでした。
しかしながら、現在では企業間取引が人手を介さずオンラインで完結することも増えてきています。つまり、営業部門の存在しない企業も増えてきているということです。
現在では、買い手側が主導権を持って必要な情報をネット上で探し、さまざまな企業が公開している取引条件をフラットに比較しながら、ドライに「最も条件がいい取引先に発注する」というような形も増えてきました。
BtoBマーケティングの現在のトレンド
そうした流れの中で、従来型のセールス・マーケティング領域における活動は、基本的に効率化・自動化が進められるようになってきました。
まず、リードの生成(見込み顧客企業リストの作成)については、無作為に抽出されたグループに対して一斉に(絨毯爆撃的に)情報をばらまいて反応を待つ、というような古典的なやり方は、もはや完全に過去のものとなりました。
オンライン上のデータ解析を通じて、自社のサービスに関心を有すると考えられるターゲットをスムーズに抽出してリスト化することが可能になっています。
そして、MA(マーケティング・オートメーション)のシステムを使用し、リード情報の一元管理から、リードに対する自動的なDMの発送等によるリードの育成(リード・ナーチャリング)までが、基本的には全自動で行えるようになってきています。
そうして商談や具体的な問い合わせまでたどり着いた「確度の高い見込み顧客」のデータは、SFA(セールス・フォース・オートメーション)のシステムに引き継がれ、組織的に顧客対応が進められていくことになります。
また、顧客企業の中の個別のカウンターパーソンの情報は、すべてSFAの中に集約され、組織内で集約・共有されます。
近年急速に普及が進んだ名刺情報の管理アプリケーションも、こうしたSFAの中に含まれるものです。
取引履歴や商談履歴はすべてデータとしてSFAの中に記録が残っていき、無駄のない顧客対応が可能になります。
このようにして、できるだけ人手をかけず、高い生産性でセールスマーケティング活動を進めていくことが、昨今のトレンドとなっているのです。
BtoBマーケティングの世界で求められる人材像の変化
こうしたトレンドの中で今まさに求められているBtoBマーケティング人材といえば、
- オンライン上のデータ解析ツールを駆使して、ターゲットとなる顧客企業および、正しいコンタクトパーソンへのアクセスルートを構築できる人材
- MAやSFAのシステムを、最適な形で組織にインプリ(導入)して、効率的な自動セールス・マーケティング組織を構築・運営していくことができるマネジメント人材
なのです。
労働生産性の向上は、昨今メディアでも盛んに取り上げられている日本経済の主要な課題でもあり、ホワイトカラー、特に営業部門における労働生産性の向上は大きな課題となっています。
できるだけ時間をかけず・効率的に、BtoBにおける顧客開発・顧客対応を行っていくことができる仕組みをつくりあげていくことは、社会的な注目度も高い仕事であるといえるでしょう。
これから始まる本格的なカスタマーサクセス時代における新しいBtoBマーケティングのありかたと、これから求められていく人材像とは
しかしながら、そもそもこのような「海に網を投げて魚を釣るようなタイプ」のマーケティング発想が、終焉を迎えようとしています。雑に投網を投げるモデルから職人技による一本釣りモデルに変わってきたのが今まで起きてきた変化だとしたら、今まさに起きている変化は、狩猟・漁業型のマーケティングから農耕・畜産・養殖型マーケティングへの変化なのです。
カスタマーサクセス時代のBtoBマーケティング
新時代のマーケティングは、まず自社ありきではなく、顧客企業の状況ありきです。企業はそれぞれ、固有の悩みを抱えています。その悩みを解決しようとして、そのための手段として活用できる製品やサービス、ソリューションが世の中に存在しないかを探すわけですし、「どのようにそれを使えば、悩みが解決できるのか」を必死に考え続けているわけです。
その顧客企業の悩みのプロセスに寄り添いながら共に歩むことこそが、カスタマーサクセスの時代のBtoBマーケティングの新しいありかたなのです。
<カスタマーサクセスに関連するページ>
「カスタマーサクセス」を担える人材が、今、市場で求められている理由
BtoBマーケティングの力点のシフト
従来、経済環境において企業の取引関係はおおむね固定化されていました。したがってそもそもマーケティングの必要性は薄く、むしろいかにして信頼関係を確立し、業界の中での名声を勝ち取り、他社を差し置いて重要大型案件を獲得できるか、という営業の重要性が相対的に高かったわけです。
しかし、現在あらゆる業界で企業が悩み、模索していることは、「いかにして現状のビジネスをうまいこと回していくか」ということだけではなく、むしろ「いかにして新しい付加価値を生み出すことができる革新的なイノベーションを実現できるか」ということなのです。
そうした状況の中では、企業と企業の関係性は移ろいゆくものになってきています。臨機応変に、市場や顧客の変化に応じて付き合うビジネスパートナーを変化させていく形が一般的になりつつあるのです。したがって、絶対に揺るがない鉄の絆を構築することよりも、臨機応変に適切な相手と組むことができる環境を整えることのほうにBtoBマーケティングの力点がシフトしてきています。
新時代の市場開拓
例えば、食にまつわる様々な企業が手をとりあって、一丸となって食品ロスといった課題解決に取り組んでいくような取り組みが生まれてきています。健康にまつわる様々な企業が手を取り合って、一丸となって予防医療の実現を目指すような取り組みも生まれてきています。
いずれも一企業単体でなせることには限りがあるので、幾つかの企業で手を組んでひとつのソリューション/プラットフォームを構築し、世の中に提供していこう、という取り組みであり、これからもますます増えていくことが予想されています。
カスタマーサクセスに着目してそこから逆算するなら、業界の垣根を超えて、場合によっては競合同士であれ、手を組んで一丸となって顧客と向き合っていく必要があります。それが新時代の市場開拓であり、新時代のBtoBマーケティングのありかたなのです。
BtoBマーケティングの担い手に期待されるミッション
また、新しいイノベーティブなサービスや事業を実験的に立ち上げる企業がどんどん増えてきていますが、こうしたサービスや事業のお客様の数は、最初はゼロですから、ゼロから市場を造り出す必要が増してきています。
このため、まずは共同実験のような方式で、顧客企業との共創の場を造り出すことが必要になることがあります。行政や地方自治体、各種研究機関・大学等教育機関が関わるケースも多いでしょう。この場合においても、「いかにしてある理念・目標の旗のもとに共感して協力してくれるパートナー達とのアライアンスを組み立てていけるか?」が、重要なミッションになってくるわけです。
BtoBマーケティングの担い手に期待される主たるミッションは、こうしたパートナリング・ネットワーキング・アライアンスビルド・コミュニティマネジメントといった領域が中心になってきています。
BtoBマーケティングの担い手に期待される能力と役割
加えて、新時代のBtoBマーケティングを担う人材には、ビジョナリーな未来を描いて表現する力が強く求められていきます。イノベーティブな事業やサービスは、非常に斬新でいままで世の中に存在しなかったものであるがゆえに、最初はなかなか理解が難しいものであることがほとんどです。したがって、それがどんな製品であるのか、どのような世界観で作り出されたものなのかを、インスパイアリングに説明・プレゼンテーションし、理解してもらう必要があるのです。
こうした考え方や思想そのものを広げていくための活動も、BtoBマーケティングの重要な要素となってきています。新しいコンセプトワードの開発、書籍の出版、カンファレンスの開催、というようなものです。ある種のエヴァンジェリスト的な役割が、期待されているのです。
そして、エヴァンジェリストが会社に所属している状態を創り出すことによって、BtoBマーケティングにおいて最も重要な信頼性の確立(このテーマのことならあの人/あの会社に相談してみよう」というブランド純粋想起)に結び付けていくことができるのです。
業際化・サービス化
このように、ある種のエヴァンジェリスト的な存在として、ビジョナリーな未来を世の中に提示していくためには、そもそも、産業全体の課題や未来の展望を正しく理解していることが、新時代のBtoBマーケティングの担い手となるための基礎的要件となります。あらゆる産業でAI/IoTによる革新が生まれつつあり、業際化、サービス化が進んでいます。そうした変化を常に追い続け、数歩先の未来を常に想像し続ける必要があるのです。
一昔前までは、BtoBマーケティングの専門家にはある特定の業界や商品に対するマニアックな知識が要求されたものでしたが、今は状況が異なってきています。むしろ、経済社会全体への俯瞰的な視野と、組み合わせにより新・付加価値を生み出していくことのできる発想力こそが求められています。
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顧客の悩みを共に考える
企業が抱える課題を、共に考え、悩み、解決のために必要なプレイヤーを巻き込み、解決への糸口を共に探っていく。そういうプロセスを牽引する力こそが、これからの時代のBtoBマーケティングの担い手に求められる力なのです。
例えば、共に考え、悩むための場創りが、大きな仕事のひとつです。メディア運営のようなものから、コミュニティ運営・共同勉強会・ハッカソン/アイディアソンなど、さまざまな形が考えられます。これらは、一方的な情報発信の場としてのイベントやセミナーとは、意味合いが異なります。自社の製品やサービスの魅力のプレゼンテーションすることが目的なのではなく、あくまでも、「顧客の悩みを共に考える」ことが目的なのです。
freee
例えば、freee株式会社が運営する「経営ハッカー」という媒体は、経営×テクノロジーの最先端を知りたい、学びたい、そして自社の経営を革新したい、と考える企業人にとっての学びの場として機能しています。
小松製作所
建設機械・車両・産業機械他のリーディングカンパニーである小松製作所(KOMATSU)は、単純に製品を販売するにとどまらず、「SMART CONSTRUCTION(スマートコンストラクション)」というコンセプトのもと、建設現場に関連するさまざまな社会的課題の解決そのものをサービスとして提供していこうとしています。そして、そのサービスの意味するところや価値を理解してもらい、お客様と共に建設現場の課題を解決していかんとして、様々なBtoBマーケティング施策を展開しています。
例えば、オープンイノベーションの取り組みである「コマツ・アイデアソン」の開催や、建設現場の悩みについて解決の糸口を学び考えるための場の提供(コマツIoTセンタ)等です。
カスタマーサクセスによってBtoBマーケティングは変化する
「一方的に情報発信をして、反応を示したリードをかき集めて刈り取る」というような古典的なマーケティングではなく、目の前にいる際に悩んでいたり困っていたりする人の課題解決を支援し、共に解決策を考えたりするところから一社一社、丁寧にパートナーシップの樹立を進め、そこからマーケットを広げていくプロセスこそが新時代のBtoBマーケティングの在り方です。
カスタマーサクセスという概念の誕生と広がりにより、BtoBマーケティングの世界は非常に創造的な仕事へと変化しようとしています。ただ単にデータ分析やマーケティングシステムに明るいだけでは、これからの時代は期待される役割を果たせなくなってしまう可能性もあります。BtoBの世界の醍醐味は、BtoCではなかなか味わうことのできないスケールの大きな仕事に携わることができるということではないでしょうか。社会構造、産業のありかたそのものに大きな変化を巻き起こすことができるのです。
その市場の変化を先導していく役割を期待されている新時代のBtoBマーケティングの担い手に、あなた自身がなってみませんか?非常にチャレンジングな仕事であり、これからのキャリアにも大きなプラスになるはずです。
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