by小野 進一
社外CFOを採用したい企業側のニーズと時期、適した人材とは
現在では多くの企業が副業を容認していて、ファイナンス面での副業も盛り上がりを見せています。
そんな中で、
「CFOとしてIPOを成功させたが、新たなチャレンジがしたい」
「会計や財務の知識を活かして、CFOとしてのキャリア形成をしていきたい」
と考える方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、CFOとしての価値をより高めていくためには、副業を通じたキャリア形成が有効です。
今回は、今後の人生を柔軟に生きていくためのCFOの副業について、社外CFOを採用したい企業側のニーズに適した人材像、ニーズの上昇する時期などにフォーカスしてご紹介していきます。
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目次
副業で行うCFOとは
そもそも、「CFO(Chief Financial Officer)」とは、「最高財務責任者」を意味し、企業の財務を統括する役割を担います。
会社経営において、財務は3本の指に入るくらい大事なものであり、CFOは非常に重要な役割といえるでしょう。
社内CFOと社外CFOの違い
CFOは大きく分けて、社内CFOと社外CFOに分類されます。
社内CFOは、会社員として企業に属して業務を行うCFOのことです。一方、社外CFOは、会社員として企業に属さないで業務を行うCFOのことになります。
社内CFOの場合、次のような業務を行うことが多くなります。
- 財務戦略
- 監査法人との渉外
- 上場準備
社外CFOは、CFOとしての業務をフルタイムですべてこなすわけではありません。いくつかに切り離された業務を受託し、定められた期間中に業務に集中し、パフォーマンスを発揮するというスタイルになります。
社外CFOの役割
副業における社外CFOには、CFOとしての業務をすべてこなすことが求められる訳ではありません。
副業における社外CFOの役割は、以下のような内容になります。
- 企業内の財務に関するマネジメント全般
- 資金調達関連の渉外・調整・株式発行等全般
- 監査法人等との渉外
- 上場準備に伴う財務コンプライアンスの強化と管理
内容的には、企業に属しているCFOとほぼ同じような役割を果たすことになります。ただし、これらすべての業務を副業で行うことは不可能に近いので、これらの業務の一部分をスポットで請け負うことになります。
企業統治が万全でない状態の企業にニーズが
社外CFOを起用した場合、社内CFOの役割を担う社長や社員がいくつかの役割を担当し、副業CFOがスポットとして社内や社外で残りの役割を担うといった具合になります。
このように、CFOの業務の一部分のみを受け持つという点と、残りの部分は社長や他の取締役が行うという点から、副業としての社外CFOは、企業統治が万全でない状態の企業にニーズが生まれる仕事だと言えます。
また、上場準備期における主幹事証券会社との折衝などは、副業の社外CFOだと実質的に行えません。社外CFOが担えるのは、あくまでも上場準備の後半までの役割となります。
社外CFOの採用ニーズ
今までの内容をまとめると、副業の社外CFOの業務範囲は次のようなものになります。
- スポット採用
- 役割の切り分け
- 上場準備後半まで
また、上場企業ではコンプライアンスの問題上、スポットでのCFOの利用が難しくなります。そのため、副業の社外CFOを必要とするのは非上場企業になります。
以上のことから、企業が副業CFOを採用したい時期と業務内容を簡単にまとめると、以下の通りになります。
- 起業時の資金調達
- 創業初期の会計全般
- 財務基盤の強化
- 上場準備前半の監査法人との渉外
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
起業時の資金調達
起業時に行う財務戦略は、「どこから資金調達するのか?」「株は渡すのか?」「優先株なのか普通株なのか?」というように、重要な決断ばかりです。
しかし、その時期が過ぎれば会社が利益を稼ぐために創業メンバーで稼働するようになるので、CFOの役割は一気に減ります。創業間もない頃の会社が継続的なCFOを雇用してしまうと、CFOへの給料がかなりの負担になってしまいます。
しかし、資金調達時のみのアドバイザリー業務や、実際の交渉を副業の社外CFOに任せ、その後は社長がCFOを兼務すれば、会社の資金的な負担を減らせます。結果、社内のリソースを事業の成長に集中させることができるのです。
CFOは、直接的に利益を稼ぐ仕事やポジションではありません。だからこそ、「できればスポットで任せたい」というのが、起業時や創業間もない頃の企業側の本音なのです。
創業初期の会計全般
企業といっても規模は様々ですが、社員が1~2人の時は給料の支払いや取引先への支払い・会計にはそこまで苦労することがありません。社長がすべてを行うといったケースが多くなります。
しかし、50人規模になってくると、企業は違うステージへ差し掛かります。社員が増えてくると、社長の兼任も難しくなってきます。すると、社内にいるそれなりの役職の人や、経理の知識がある人間に、財務や会計の担当を任せることになります。
また、会社の規模が大きくなってくると、しっかりとした会計ルールや社内制度、取引先との渉外を行う必要が出てきます。そうなってくると、専門知識のない「なんちゃってCFO」には荷が重くなってきて、スポットで副業CFOを求めるようになるのです。
財務基盤の強化
会社が大きくなるにつれてキャッシュフローの予測がある程度簡単になり、売り上げや利益の変数が定まってきます。
そうなると、その流れを維持するための財務基盤の強化と管理が必要になります。銀行側と交渉して資金が滞らないようにしたり、利益のROIなどを逐一把握し、必要であれば社長や事業責任者と調整したりする、といった業務が欠かせません。
これらの業務を行うには、会計の知識だけではなく、事業の経験も必要になります。すると、この業務だけを副業である社外CFOに任せたいというニーズが大きくなってくるのです。
上場準備前半
将来の株式公開(IPO)や株式の売却方法や実施するタイミングを決めたりするイグジット戦略では、明確なスタート地点の定義はありません。しかし、準備の前半に行うべき業務がたくさんあります。
主幹事証券などと具体的な話になる前に、企業の財務・内部統制を上場先の市場の基準に合わせてしっかり固めておくことも必要になります。
そのため、上場準備前半の時期に、上場先市場に合わせた財務整理を行い、必要であれば監査法人と調整することが副業の社外CFOの仕事になります。
社外CFOが企業に必要とされる3つの理由
企業においてCFOは重要な役割なので必要とされることは理解いただけると思いますが、社外からの副業CFOが必要とされる理由がわからないという方もいることでしょう。
実は、社外CFOが企業に必要とされるのには、次のような理由があるのです。
スポット採用なのでコストを抑えられる
企業の規模や行う業務内容にもよりますが、フルタイムでCFOを雇用する場合、年間で1,000〜2,000万ほどのコストがかかると言われています。
しかし、副業の社外CFOをニーズに合わせてスポット採用することで、CFOにかかるコストを大幅に抑制することが可能になるのです。
社長や役員が本業に専念できる
創業して間もない企業やベンチャー企業の場合、社長や役員が財務面の業務を担当しているケースが多くなります。すると、決して専門ではないCFOの業務を行うことで、本当に注力したい仕事の進捗が滞ってしまいます。
しかし、副業の社外CFOを採用することで、専門的知識を持つ社外CFOに財務面を任せられ、社長や役員は本業に専念することができるのです。
各種アドバイスを期待できる
社外CFOは、もれなく財務における専門的な知識を持っています。さらに、人によっては上場準備実務を複数社で経験していたり、数十億円規模のM&Aを実施していたり、ハイクラスな人材の場合があります。
社外CFOを必要とする企業は規模が小さめでコンサルタントを活用できない場合が多く、財務を超越したアドバイスを期待できるという点も魅力になります。
社外CFOに適した人材とは
ここまでは、企業側のニーズを解説してきました。では、実際に副業として社外CFOを行うのに適しているのはどのような人材なのでしょうか?
実は、副業として社外CFOを行うのに適している人材は、先述の4ステップごとに異なります。それでは、適している人材について、ステップごとに解説していきたいと思います。
- 起業時の資金調達
- 創業初期の会計全般
- 財務基盤の強化
- 上場準備前半の監査法人との渉外
ちなみに、CFOは会計士や公認会計士に限定されません。財務責任者の経験がない人や、資格がない人でも務めることは可能です。
副業のCFOはスポット的な採用でもあるので、総合的なCFOとしての優秀さよりも、会社側のニーズと自分のスキルがいかに合致しているかがポイントになります。
起業時
起業時に必要な資金の準備に関して、創業者の自己資金以外は、資金調達を行うことが基本になります。よって、起業時のCFOは「資金調達先の選定・交渉」が主な仕事になります。
この時期の資金調達先の選定や調達方法に失敗してしまうと、今後の事業活動に取り返しのつかない大きな影響を及ぼします。
ですから、資金調達のアドバイザリー業務の経験を積んできた銀行員、ファンドやベンチャーキャピタルなどで実務に当たっていた人などが向いています。
- 銀行などで対零細企業や小企業のアドバイザリー業務に従事していた人
- ファンドやベンチャーキャピタルなどでスタートアップ企業を担当していた人
創業初期
創業初期は、会社を回すことが最優先される時期です。社長も含めた創業メンバーは利益を上げるために、ひたすら業務に取り掛かっています。
よってこの時期は、日々増える取引先や仕入れなどの候補先をすばやく効率的にさばきつつ、会計をも担える人物が適しています。
また、ビジネスは理想通りに進むことが少ないものです。軌道に乗るまでの間に資金がショートしないよう、税金対策など資金繰りの面でもサポートできる人物が理想的でしょう。
- 中小企業で会計や経理部での就業経験がある人
- 銀行で中小企業を担当してきた人
財務基盤の強化
会社が回り始めてくると、リソースを割く場所の「選択と集中」が重要になります。さらに、それに合わせてROIが高い場所へ資金を移動したり、場合によっては資金を調達したりするような役目が求められます。
よって、この時期には企業で行っている事業のことをよくわかっており、かつ財務にも詳しい人物が適しています。
また、会社を強くしていくために過剰債務や債務超過を解消できる戦略を立てられる人物であるとなお良いでしょう。
- コンサルティングファームで経験がある者。特に会計系のファーム経験者がベスト
- ベンチャーキャピタルなどからハンズオンでの参加経験がある人
上場準備前半
ここからのCFOは、監査法人とのやり取りが主な業務であり、IPO経験者だと十二分にバリューを発揮できるでしょう。
さらに、この時期には、上場準備のためにはどのような財務環境や資本政策が整っている必要があるのかを知っている必要があります。
経験がモノを言う段階でもあります。監査法人での経験を積み独立した公認会計士の方などが、キャリア形成の一歩目とするのもアリでしょう。
- CFO経験者
- 大手企業、上場企業で財務の責任者をしていた者
- 監査法人でのキャリアがある公認会計士
社外CFOを副業で務めた場合の収入
一般的に、フルタイムでのCFOの年収は1,000~2,000万円であると言われています。副業の社外CFOはスポット採用で労働時間が短いため、フルタイムでのCFOの年収基準と同じ場合は少なくなります。それでも、条件によっては800~1,200万円の年収も可能になるでしょう。
しかし、CFOとしての能力や企業側のニーズによって給料を決定する企業がほとんどになります。ストックオプションの有無も企業によって異なるので、収入に加えてそういったところの条件も加味するといいでしょう。
面談時に、どれだけコミットするか等も含めて、お互いの条件のすり合わせが何よりも重要になります。
社外CFOの年収基準や条件が分からないと交渉が不利になる場合も多いので、そのような場合には副業紹介エージェントの使用なども視野に入れてみましょう。
社外CFOの採用事例
副業CFOの採用事例は、公表されることは非常に稀であるばかりか、公表を避ける傾向にあります。
今回は弊社の事例より、クライアント側の事情を多少伏せた上で、社外CFOの採用事例を紹介していきます。
A社:簿記資格を有する者の手に負えなくなったためCFOを採用
バックグラウンド:3人からスタートした会社で、スタッフの一人が簿記の資格を持っていたため、小規模のうちは経理・財務を兼任してもらっていた。
CFO採用のきっかけ
・事業が軌道に乗って安定してくるにつれて、銀行との借入交渉や資金投資先に不安が出てきた。
・さらに、人数が増えて規模が大きくなり、兼務者が全てのキャッシュフローを把握できなくなってきた。
・元々の業務にも支障をきたすようになってきたので、経理部の課長のキャリアを持つ社外CFOをスポットとして採用。
採用後の役務
週2回、3~4時間ほど会社に来訪。キャッシュフローの整理と登記、資本政策の壁打ち役を担う。
採用社のコメント
表向きには経営が安定しているように見えても、数字を見てみると問題がある場合が多くありました。でも、財務諸表が見られない人間にはサッパリなわけです。
そういう意味で、かなり助かりましたね。無駄な給料が発生しないことと無駄な時間が発生しないことで、お互いにWIN-WINなのではないでしょうか。
B社:上場を見据えたうえでの採用
バックグラウンド:上場を見据え、会社の財務状況を整えていく必要があった。
CFO採用のきっかけ
・税理士に大部分を任せていたものの、上場時には財務状況や資本政策が見られると判明。
・専門家の力を借りて会社の財政統治をしっかり固めていかなくてはと考えた。
・上場準備に入ったので、監査法人で11年のキャリアを持つ公認会計士を採用。
採用後の役務
週に4回午前中の出社で、前日までに溜まった経理処理。さらに、コンサル的な立場として、監査法人との打ち合わせへの同席。
採用社のコメント
上場を見越した上で、財務基盤・資本政策を整えていくことが必要になりました。
単なる会計のプロではなくて、きちんと同じビジョンを持った人間でないと中途半端な結果になると感じました。そこで、会社のビジョンに共感してくださる方を面談で選定しました。
結果として、財務の面から会社を強くしてくれたのはもちろん、上場準備の際にかなりサポートしてくれて助かりました。
上場を成功させれば彼自身のキャリアにもなるので、大事な時期には自主的にほぼ毎日来てくれていましたね。やっぱり熱意が違いました。
副業でCFOを請け負うためには
では、副業でCFOを請け負うためには実際どうしたら良いのでしょうか?手段は主に、次の2つです。
- 知り合いのつてで探す
- 求人サービスから探す
上場していない企業、特に資金調達などの創業時はクローズドで人員を集める場合がほとんどです。
なぜなら、「あそこの会社にはCFOがいない」と思われることは、会社にとってリスクの1つでもあるからです。
ですから、スポットのCFOを含め、CFOの募集が表に出ることはそうそうありません。完全に非公開を前提とした求人に限られることがほとんどです。
また、CFOの募集があった場合には、「自分のスキルと会社のニーズが合致しているのか?」ということも重要になります。
さらに、そのCFOの求人は、「副業も応募が可能なのか?」ということも問題になります。
そのような、企業側と副業CFO候補とのミスマッチを防ぐことが「プロの副業」の使命でもあります。
あなたが持っているスキルと企業側のニーズをすり合わせ、エージェントが「副業」という形でマッチングします。
「副業専門」である点と「エージェントがすり合わせを行う」点は、CFOの副業を探す方にとっての大きなメリットになります。
キャリアを積んで柔軟に生きていけるCFOへ
現代では、「副業・兼業」といった雇用にとらわれない柔軟な生き方が求められます。それはCFOも同様です。ある企業のCFOではなく、ファイナンスのスペシャリストとして、様々な企業に必要とされるような人材になりましょう。
そのためには、副業を通じてCFOとしてコツコツキャリア形成していくことが大事です。副業というと「お小遣い稼ぎ」のようなイメージを抱くかもしれませんが、それは仕事次第です。
自分のスキルを活かして実績を作っていくような仕事を選べば、それは立派なポートフォリオとなります。これからの時代を生きやすくするための武器となっていくでしょう。
そのためには、あなたのスキルと合致した仕事を副業とすることが何より大事です。そのためにも、ぜひ「プロの副業」を活用してみてください。
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