by大村昂太朗
大副業時代の独立について
大副業時代がやってきました。多くの企業が副業を容認・奨励するようになり、副業することはもはや一般的なことになりつつあります。
また、大副業時代になると、独立がしやすくなると言われます。確かに、一昔前は独り立ちしたあとにしか外で実力を試せなかったので、独立のリスクは大きいものでした。
しかし今なら、会社に勤めながら、副業を通じて自分の稼ぐ力を試すことが可能です。
会社を離れて独立しても稼ぐ力を自分が持てているかどうかを確かめつつ、徐々に自分自身の顧客を育てていく。
そして、「これなら将来にわたって安定した収入を獲得し続けることができる」と思えたタイミングで独立する。大副業時代の到来によって、そうしたスムーズな独立を実現することが可能になりました。
では、このように副業を通じて最終的に独立を目指す道筋には、どのようなメリットとリスクが存在するのでしょうか。本記事で掘り下げていきたいと思います。
「時間」から考える独立のメリット
独立の一番のメリットは、自分の時間を自由にコントロールできるようになること、ひいては自分らしいライフスタイルを実現できる可能性が広がることではないでしょうか。
一般的な働き方
昨今の「働き方改革」によって自由な勤務形態が認められるようになってきているとはいえ、会社勤務の場合はあるていどの時間的拘束を受けることから逃れられません。
一般的には、1日8時間週5日、合計で週50時間働くことが就業規則等によって義務付けられることになります。
概算ですが、月220時間労働として月収22万円であれば、時給換算は1000円になります。
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それだけの長い時間を会社での「本業」に時間を割くことが、会社員生活のスタンダードモデルになっています。
1日の睡眠時間を6時間とすると、1日あたり18時間の時間があります。そうすると、1週間で起きている時間は合計126時間です。
そこから1週間分の会社で働く時間50時間を差し引くと、週76時間が余ることになります。 「けっこうあるな!」と感じるかもしれませんが、実際はどうでしょうか。会社で働く人の多くが「時間的余裕はまったくない」と感じているのではないでしょうか。
週76時間の時間が余るとはいえ、このうち土日が36時間、平日は40時間です。
平日朝6時起床、家を出るまでの朝の2時間半、夜12時就寝だとすると夜の5時間半が空く時間になるわけです。
ただ当然ながら、帰ったら家のこともやらなければなりませんし、そもそも本業の仕事を一生懸命やっていれば当然疲れるわけで、休みもとらなければ健康を損ねてしまいます。
土日も必要なものを買いに行ったり、人と会ったりと、なんだかんだでやることがたくさんあるはずです。
そうなると、副業をするにしてもおのずと割ける時間にも限りが出てしまいますし、できる副業の内容も限られてしまいます。
真面目な人ほど副業を度外視する
中には「自分は会社勤めだけれども、在宅で働けるテレワーク制度やフレックス制度が完備されているし、副業も仕事時間を有効に使って上手に進めていますよ」という方もいるかもしれません。
しかし、真面目な人であればあるほど、いくつものことを並行して進めたりすることが難儀だったりするものです。
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「本業と副業を同時に進めるのが気持ち的に困難だ」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「会社で働く時間は会社の仕事をする。会社で働いていない時間も、基本的に意識は常に会社の仕事に向けておく」。
真面目な人ほど、そのように考えるもの。
そんな方にとって副業は、現実的に選ばない選択肢になっているかもしれません。
どのようなタイプの人であれ、本業としての仕事を持ちながら副業もこなすことは、実際のところとても大変なことです。
時給換算しても効率的なら合理的
副業の場合、労働時間に対して報酬を支払われることは稀で、創り出した成果物に対して報酬支払されることがほとんどです。
これは、勤務時間中にきちんと勤務をして仕事に取り組んでさえいれば安定して給与をもらえる本業の働き方とは、根底からパラダイムを異にするものです。
会社に拘束されて働くよりも、自分自身で時間をコントロールして効率よく成果物を創り出すことに集中した方が、時給換算で考えても効果的に収入を創り出していけるのであれば、独立は合理的な選択肢になりうるかもしれません。
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加えて、会社から離れて独立して行う個人の仕事は、やればやるほど稼げるわけですから、収入も、青天井といえば青天井です。
この観点からも、自分で仕事をどんどんとれる見通しがあるのであれば、独立は合理的な選択肢になりうるかもしれません。
このように、独立を考える際のキーファクターとして「時間」の概念があります。
報酬をもらえるだけのクオリティの成果物を仕上げるのに、どれくらいの時間を必要とするのか?
これが、短い時間で上手にできる自信があるというのであれば、独立は合理的な選択肢になりうるかもしれません。
独立を検討されている方は、一度自分の仕事の時間をはかってみるとよいかもしれません。
実力を発揮できる時間帯を選べる
労働時間あたりアウトプットを「生産性」と呼びますが、どうしたらその質を高めていくことができるのでしょうか。
知的労働における生産性は、体調や気分、そしてモチベーションに大きく左右されるものです。
自分がもっとも集中できる環境に身を置ける時間帯に上手に仕事の時間を寄せて、時間当たりアウトプットを最大化する。
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早朝こそ集中できる方もいれば、深夜こそ集中できる方もいます。
みんなが仕事している賑やかな日中じゃないと動けない方もいるでしょう。
一気に働いたほうが成果が出る人もいれば、長めの休憩をこまめに挟んだほうが1日トータルでの成果が大きくなる人もいるはずです。
そうしたコントロールを効率的にやっていければ、独立したあとの仕事のパフォーマンスは大きなものになっていくでしょう。
つまり、パフォーマンスのあげ方は人それぞれ。独立のメリットは「自分の時間をもっとも時間を生産的に使えるような形で自由にコントロールできる」点がいちばん大きいと言えるのではないかと思います。
スケジュールも思いのまま
1週間のなかでの時間配分も、自由自在にコントロール可能です。
1日あたりの仕事時間を短めにして、そのかわり、週7日で働くようにしたり、週の前半に猛然と働いて後半は余裕をもったスケジュールにしたり。
晴れた日は仕事を控えて、天候が優れない日に仕事を寄せてもいいかもしれません。
なにより、体調がすぐれなかったり、精神的にしんどいときは、少しペースダウンしてもいいわけです。
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独立して自分で仕事のスタイルを決めていけるようになれば、自分らしいライフスタイルを作り出すことが可能になります。
夏と冬は仕事を減らして、春と秋は仕事を増やすなど、1年の中での仕事の波を意図的につくってもいいでしょう。
会社勤めの場合でも有給休暇の制度がありますが、取りたいときにスムーズに取れるとも限りません。
独立して、自分で自分の時間をコントロールできるような状態になっていれば、たとえば身内に何か突発的なことが起きた場合に、家族最優先で、仕事のほうを柔軟にコントロールしたりすることも自分の判断で行いやすいわけです。
また、自分で自分の時間をコントロールできるような状態になっていれば、人付き合いもしやすくなります。
独立すると人とのかかわりが減ってしまうのではないか、と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかしむしろ、独立によって時間を上手にコントロールできるようになれば唐突に横から予定を押し込まれたりすることも減るわけですから、以前よりも自由に、会いたい人に会えるようになったりもするものです。
独立することで可能になるライフスタイルとしては、他にもさまざまなものが考えられるでしょう。
短期独立で学び直しが可能
会社員としての勤務形態は、現在のところ、週休2日制がスタンダードです。これでは、なかなかまとまった時間を確保することは難しいものです。
細切れに小さい学びを継続することはできるかもしれませんが、話題の経営コンセプトや最新の技術トレンドを軽くキャッチアップするくらいしかできないのが現実でしょう。
社会人生活は長いですから、途中で学び直しが必要になる局面もあります。学ぶためには時間が必要です。そのためには、一時的にしゃがみこむことも必要でしょう。
たとえば、2年間ほど、独立してフリーランスとして活動して最小限の生活費を稼ぐとします。その期間、会社員時代よりも収入は減ってしまうかもしれません。
ただそのぶん自由な時間をたっぷりと確保し、その時間を将来に向けた投資としての学び直しの時間に充てる、という選択は、「人生100年時代」と呼ばれる現代において、誰しもが検討するに値する選択肢であると言えるでしょう。
2年間、フリーランスとして稼ぎを積み上げながら、社会人専門学校や大学院、その他のスクール等で学びを得て、2年後の大きな飛躍の糧とする。
大副業時代の到来によって、こうした、「短期独立」という選択肢も選べるようになったのです(短期留学のようなものですね)。
一昔前は、こうした学び直しは、会社がお金を負担する形でのMBA留学に選抜されたり、所得等に恵まれている人が十分な貯金を元手として会社を休職して行うのが一般的なことでした。
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しかし、そのような道筋は、誰しもに開かれたものではなかったため、多くの人は学び直しを諦めるしかありませんでした。
ところが、大副業時代においては、誰しもがこうした挑戦もできるわけです。
たとえば、経営・ビジネス・ファイナンス畑を歩んできた人が、表面的理解にとどまらない、テクノロジーの可能性と限界についての深い理解を持つことができるように、2年間かけて集中してPythonなどのプログラミング言語の習得をしたり、機械学習モデルやブロックチェーンの実装を行ったりする経験を積むなどといったことが考えられます。
逆に、長年技術畑を歩んできたエンジニアの方が、テクノロジーをビジネスに変えていくための勘所を体得すべく、体系的な会計の学習をしたりファイナンスの学校に通ったりというような経験を積む、といったようなことも考えられるでしょう。
会社の中でも学びの機会は多々あるものですが、さすがに日々の業務とあまりにかけ離れた内容の学習を、会社の業務時間を通じて行うことは、現実的には難しいのが実情です。
しかしながら、長い仕事人生をトータルで充実したものにしていくためには、仕事とは別領域の深い学びが欠かせないものです。
「短期独立」は、社会人がこうした深い学びを行うための有力な選択肢となりつつあります。
居住場所を自由に選べる
多くの企業は、東京圏に集中しています。とりわけ、IT業界はその傾向が非常に強いです。
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したがって、かつては会社で仕事をするためには、東京周辺に居住することが大前提でした。
しかし、独立して仕事をするとなった場合には、東京に限らず自分が暮らしたい場所に暮らしながら仕事をしていくことが可能になるのです。
「地方創生」という言葉をよく耳にしますが、肩肘はって地域のために何かをしようと思わなくとも、その土地にひとり住民が増えるだけで地方にとっては大きなプラスです。
もちろん、自分自身が働きたい環境で働けるわけですから、生産性も高まるでしょう。つまりお互いにとってハッピーな関係が生まれるのです。
このように、時間を自分でコントロールできるようになることで、会社勤めをしていては実現が難しいようなライフスタイルを創り出していく可能性を広げられる点は、独立の大きなメリットであると言えるでしょう。
独立のリスク
一方、独立にはさまざまなリスクもあります。思いもしなかった事態が起きて、想定通りいかなくなってしまうことにもなりうることです。
会社という組織がもたらしてくれていたさまざまなベネフィットを見落としていた場合に、あとから強烈なしっぺ返しが襲いかかってきます。
中長期的な収入が見込めるか
仮に、今現在、独立することによって短期的に大きな収入が見込めるとしても、中長期的に見て合理的な選択となるとは限らないことに留意が必要です。
現在、会社に勤務しながら、副業でも稼げているとします。
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ただ、それが「XXX勤務のXXXさん」という看板で仕事が取れているとしたらどうでしょうか?
辞めた瞬間に、「元・XXX勤務のXXXさん」という肩書になり、仕事が取れなくなる可能性もあります。もしくはそれすら名乗りづらくなる場合もあるかもしれません。
たとえ副業とはいえ、会社の看板ではなくあなた自身の力だけでどこまで仕事が取れているのかどうか、慎重に見極めていかなければなりません。
スキルと経験は陳腐化する
価値を生み出す源となる「スキル」や「経験」は陳腐化していく点にも留意が必要でしょう。
本業での経験を通じて蓄積してきたスキルがあったとします。それを元手に副業をして、おおいに稼げるようになり、流れに乗って独立を果たしたとします。
しかしながら、やがて蓄積してきたスキルは擦り減っていくものです。
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徐々に、報酬をいただくに値するだけのアウトプットを生み出すことが難しくなっていくのです。
今、稼げているからといって、同じやりかたで未来永劫稼いでいけるわけではない、という当たり前のことを忘れないようにしなければなりません。
つまり会社は、アウトプットの場であるとともにインプットの場でもあるわけです。
会社というのは、ある意味お金をもらいながら学べる場所でもあるわけで、大変恵まれた環境なのです。
よいアウトプットを継続するには、よいインプットを継続することが必要です。
独立後も、よいインプットを継続することを意識的に心掛けていかないと、いずれ破綻してしまうことを忘れてはなりません。
自由には責任が伴う
一昔前は、「会社に縛られるのがいやだから独立する」というような人もいたかもしれません。
しかし今や、会社も自由にさせてくれる時代となりました。つまり、会社をやめなくとも、会社に過度に縛られることがなくなってきたのです。
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つまり、会社をやめずに籍をおいたうえで副業をした方が合理的な時代になってきた、とも言えるのです。
本業の会社に籍を置けている安心感があるぶん、副業においても思い切ってやりたいことにチャレンジできることです。
「自分がやりたいことだけをやっていきたい」と、思い切って会社をやめて独立したとします。
しかし「とにかく稼いで食べていかなければならない」状況に追い込まれ、結果的に会社に勤めていた時よりも「やりたくもない仕事に追われてしまうようになってしまった」という哀しいエピソードも、よく聞きます。
会社の給与がもたらしてくれる安定感・安心感は、人生の安定・安心そのものです。
会社として組織で稼いだお金を、給与という形で従業員に毎月定額分配するモデルは、人類が生み出した最大の発明と言えるかもしれません。
このベネフィットを過小評価して、表面的な自由を求めて独立をしてしまうと、のちのち大変苦労することになりかねません。
人間関係も同様です。「会社の中の煩わしい人間関係がいやで独立をしたら、独立によって不安定な立場に立ったことによって、以前よりも立場が弱くなり、今まで以上に周囲に気を遣わざるをえなくなってしまった」というような悲しい声もよく聞かれます。
独立は、確かに自分の時間を自分で自由にコントロールできるようになることにつながります。
だからといって、それが必ずしも「自分のやりたいことだけを自由にやれる」「自分の付き合いたい人とだけ自由に付き合っていける」状態とイコールではないことを、あらかじめ十分に留意しておく必要があります。
本業以外の仕事に追われる
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独立すると経理や税務(確定申告関係)の負担も非常に大きくなります。
これについては、税理士さんなどの助けを借りることもできますし、最近はクラウド型経理サービスや、事務作業の各種自動化ツールの発展により、負担は減ってきているともいえます。
それでも、それらのサービスを利用するには相応の対価を払わねばなりませんし、負担はゼロにはなりません。
それだけではありません。
- 請求書の発行などの事務作業
- 顧客獲得・維持のための営業活動
- そのための名刺作成・ホームページ作成等の総務業務
- 仕事のボリュームを管理する「自分自身のマネジメント・スケジュール管理」
このように、何から何まで全部自分自身でやっていかなければならなくなるのです。
デザイナーやエンジニアの方は、「組織のしがらみや雑事から離れて、とにかくクリエイティブなものづくりに集中したい」という思いで独立を選択することも多いでしょう。
しかし、かえっていままで会社がやってくれていた雑務に忙殺されてしまい、本来時間を割きたかったクリエイティブワークに注げる時間が減ってしまうことも起きかねません。こうなると、まさに、「本末転倒」です。
「会社」というものは、皆がそれぞれの得意分野を分担して行うことで組織としてのパフォーマンスを最大化していくための仕組みそのものなのです。
そのメリットは、社員全員が享受できます。「会社」というものは、たいへんよくできた仕組みなのです。そのことを忘れてはなりません。
独立を賞賛される時代の終わり
それでもなぜ、独立をするのでしょうか。
そもそも、現代は「独立してすごいね」「起業なんてしてすごいね」と言われる時代ではなくなってきています。
一昔前は、独立すること、起業すること自体が容易ではない時代でした。
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しかし現在ではやろうと思えば誰でもできることが周知の上なので、特別な賞賛や関心を集めなくなってきているのです。
独立後、人に見向きもされない状態に陥り、寂しい思いをしてしまう人もいるといいます。
そもそも人から賞賛・注目されたいがために独立する、という動機自体が不純といえば不純なのでしょう。
独立を考えるにあたっては、そういった動機がカケラでも胸の中にうずいていないか、内心をよくよく見つめてみることをおすすめします。
個人の力には限界がある
副業というのは基本的に、個人が保有している専門的スキルを元手にサービスを提供することで対価をもらう形を取ります。
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しかしそもそも、どんなに優れた専門的技能を有した人であったとしても、人間ひとりで成し遂げられることには限界があります。
おおきなことを成し遂げるにあたっては、会社に所属して、その会社の有しているパワー、つまり、資本や人、信用力やPR力を借りながら進めていくほうが早くて確実なのです。
何年も何十年もかけて、巨大なプロジェクトをチームの力で一致団結して完遂させ、時代を大きく転換させていくような仕事の醍醐味は会社の中にこそあるものです。
かように、「会社」という組織は人類のおおいなる発明であり、非常に多くの有形無形のベネフィットを働く人に提供してくれる器なのです。
会社からの独立を考えるにあたっては、そのことを決して忘れないようにしておきましょう。
それでも独立をすることの意義と価値
ここまでで見てきましたように、独立にはさまざまなメリットもあれば、リスクもあります。
それでも独立を選ぶか否かは、各人の価値観に委ねられているといえるでしょう。
人生の中で、何に高い優先順位を置くのか。何を選び、何を捨てるのか、という問題です。
ここでは、先述した
- 時間を自由にコントロールできる
- 自分らしいライフスタイルを創っていくことができる可能性が広がる
メリット以外の、独立をすることの意義と価値について考えてみたいと思います。
会社を経営する力が身に着く
個人の技能をもとにフリーランスとして独立をすることの意義として、会社を経営する力を身につけられることが挙げられます。
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独立すると、自分自身の専門スキルを駆使したサービス提供とは別に、スケジュール管理から、営業・宣伝、経理税務や事務に至るまで一通り経験することになります。
あらゆる職種の重要性や難しさが分かるわけです。
これはいずれ、さまざまな得意分野をもった人間が集まった会社組織をマネジメントする立場に立ったときに、おおいなる財産となることでしょう。 また、独立した場合、何かトラブルが起きた時の対応責任や、資金繰り等に関する経営責任においての最終責任を自身が背負うことになります。
この「じぶんの後ろには、もう誰もいない」、すなわち「The Last Man(ラストマン)」である状況は、まさに最高経営責任者たる社長が置かれている境遇と同一なのです。
こうした状況に置かれたときの責任感や決断力を養う意味においても、独立は、他では得られない経験が得られるものです。
起業の際の足掛かりになる
そして、個人のスキルで稼ぐフリーランスとして独立をすることは、実際に「会社を創りたい」と考えている全ての人に、おおいなる現実的なメリットをもたらしてくれます。
新事業を創出する。新事業を営むための資本の箱としての株式会社を新設する。
この起業という営みは、ひとくちに「独立」といっても、個人のスキルで稼ぐフリーランスとは、性質が大きく異なります。
多くの場合、フリーランスとしての独立は、すでに確立されたスキルでもって、すでに世の中に存在している需要を満たしていくことで手堅く収益を積み重ねていく形をとります。
一方、「会社を起業する(新事業を創出する)」ことは、「世の中に受け入れてもらえるかはわからないが、世の中がきっと求めているんじゃないだろうか」、と信じられる「今はまだ世の中にない仕組み」をゼロから創り出していく営みです。初期投資も必要です。
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フリーランスとしての独立とは異なり、会社を作るのにも、事業の形を整えるのにも、相応の時間を必要とします。
そしてなにより、事業を立ち上げたはいいが、お客さんがひとりもつかない可能性もあるわけです。
そこまでいかなくとも、採算ラインに乗るまでの数のお客さんを育てるために、相応の時間を必要とするわけです。
このように、会社を起業することは、おおいなるリスクをはらんだ営みであり、起業することの本質は、まさにそのリスクに挑むことそのものであるわけです。
前述の通り、こうした新規事業を立ち上げるにあたり、独立して自分自身で新規に会社を設立してやらなくとも、会社内部の新規事業として立ち上げていくというアプローチもあるわけです。
しかしながら、自分がどうしても手掛けたい事業があるとして、その事業を、どうも、今いる会社で立ち上げることが難しそうかつ、他の会社に転職したとしても、スムーズにその事業にチャレンジできなさそうであれば「独立して自分自身で起業するより他ない」ことになります。
いくら自分自身でその事業の意義や可能性を感じていたとしても、意義はおろか意味すら理解してもらえないこともあるわけです。
意義や意味が理解してもらえたとしても、「会社の戦略や優先順位にあっていない」、もしくは「会社として許容できるリスクの範疇を越えている」というような理由で受け入れてもらえないこともあるわけです。
このような場合には、自分で立ち上げるほかありません。
こうして「最後の手段」としての独立起業を選択した人にとって、副業は大変心強い味方になってくれます。
独立後、会社を設立し事業をカタチにするまでの開業準備期間に個人としての収入を確保できることは、先の見えない起業家にとって大変ありがたいことです。
開業準備期間における副業は、起業家にとっての生命線であるとも言えるくらいです。
魔の谷を乗り越える
一般的に、会社員が退職をすると、次の年の住民税や健康保険料は前年所得に基づいて計算がされます。
仮に所得が大きく減っていたとしても、住民税や健康保険料は高額の請求書が届き続けることがあるわけです。
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これを、独立起業における「魔の谷」と呼ぶ人もいるくらい、この支出は、開業準備期間中の大きな負担となってのしかかってきます。
この期間を乗り越えられるかどうかが最初のハードルであるともいわれています。
そして、そのハードルを乗り越えるための大いなる武器になりうるのが、個人のフリーランスとしての副業なのです。
会社が軌道にのるまでが円滑に
また、事業が形になったからといって、すぐに売り上げが立ち始めるわけではありません。
株式会社の事業の場合、多くは、初期投資にかけた投資コストと、赤字期間に積み重なった累損を、長い年月をかけて回収していくことが一般的です。
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この、長い回収期間を、潤沢な資本金でもって、会社と社員、そして自分自身の生活をつないでいければよいのですが、なかなか容易なことではありません。
したがって、投下資本を長い年月をかけて回収していくまでの期間においては、別の方法で収入を得て、繋いでいく必要があるのです。
この、会社が軌道に乗るまでの間の収入を、個人のフリーランスとしての仕事で稼いでいくことができれば、会社経営は非常に楽になります。
副業が一般的ではなかった一昔前と比べて、現代は個人としてフリーランスの仕事で稼ぎながら、会社をじっくりと産み育てていくことが可能になってきたのです。
大企業時代の幕開け
それでは、会社がうまくいき、軌道に乗った後についてはどうでしょうか。自分が設立した会社ですから、無責任に放り投げるわけにはいきません。
社員だけでなく、取引先も、顧客もいるわけですから、簡単に事業を畳むことも難しくなります。
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しかし、創業経営者として事業をずっと牽引してきたあなたが、さらに新しい挑戦に身を投じていきたいと思うことも出てくるかもしれません。
もちろん、自身の会社に大きなニューマネーをファイナンスして、その会社の中で新規事業に取り組むという選択肢もあります。
しかしそうではなく、再び、社会的影響力の大きい企業にジョインして、その企業の力を使ってスケールの大きい事業を手掛けたい、と思うことが出てこないとも言い切れません。
そのような時、自分で立ち上げた会社を、そうした大企業にバイアウトすることもできますが、なかなか簡単なことではないでしょう。
そんな時、現代においては、大企業に再就職したうえで、副業として自分が立ち上げた会社を営み続けるという選択肢も取り得るようになってきました。
つまり、
- 立ち上げた会社の創業者兼大株主兼役員であり続けながら、事業運営自体は信頼できる仲間にバトンタッチ
- 自身はマネジメントに徹する形に経営形態を変更しつつ、大企業に再就職する
このような形です。そうなれば、月に数度の役員会等への出席と、重要な意思決定への関与だけで、自分が立ち上げた会社を回し続けることができます。
「自分は日々、大企業で働きつつ、同じ時間帯、自分の産み育てた自分の分身ともいえる株式会社が、自分の手の離れたところで回り続けてくれている」状態を創り出すことが可能になるのです。
このアプローチが成功すれば、1日24時間、人生100年という時間の制約を超越していくことすら可能になるわけです。
このように、大副業時代の到来によって、「起業」という挑戦において、いままでとは全く異なるアプローチを取りながら進めていくことが可能になったのです。
このことは、志をもって「リスクある新事業を世に問いたい」と考える全ての潜在起業家たちに、勇気を与えてくれることでしょう。
まさに、大副業時代は、大起業時代の序章であると言えるでしょう。
まとめ
ひとくちに「独立」と言っても、個人で専門技能を生かして仕事をしていくフリーランス(個人事業主)になることと、会社を立ち上げて新規事業を組み立てていくこととは、まったく性質が異なるものです。
しかし、このふたつを巧みに組み合わせて進めていくことによって、収入の安定と、大きな理想への挑戦を両立させていくことが可能になります。
「会社を立ち上げたい」という強い信念を抱いている人にとって、令和の時代、2020年代は、格好の勝負時であると言えるかもしれません。
また、独立そのものを目的化せず、「どうしてもこれを成し遂げたい」という強い思いを実現するための手段が独立しかないこともあるかもしれません。
そんな時、思い切って独立に踏み込むことは、やがて多くの人の共感を集め、あなたの事業を支援する力となってくれることでしょう。
どうか、表面的なブームや浅薄な動機で動き出さないように、自身としっかり向き合って、「独立するか/しないか」の選択を、進めていってみてくださいね。
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