by大村昂太朗
日本のフリーランスの現状と未来
2020年代を目前に控え、昨今のフリーランス人口の増加やフリーランスに対する社会的認知の拡大を受けて、制度や支援体制の整備が急速に進み始めています。
このままいけば5~10年後にはフリーランスを取り巻く環境は劇的に変化し、スキルを持ったフリーランスであれば安心して生活していける世の中へと変わっているはずです。
本記事ではフリーランスを取り巻く環境の現状と未来について整理していきます。
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目次
フリーランスの社会的認知と社会的地位の高まり
ひと昔前のフリーランスのイメージは、「何かしらの事情で正社員になれなかった人が仕方なく選ぶ働き方」というものでした。
「フリーランス=フリーター」というイメージを持つ人も多く、特に男性は、結婚相手のご両親に認められるためになんとかしてまた就職する場面も少なくありませんでしたが、近年その状況が変わり始めています。
フリーランスの重要性を認めフリーランスという働き方を選択する人を応援していこうという社会的機運が高まってきているのです。
そしてフリーランスのイメージも「フリーランス=会社に雇われなくても個人の力で稼ぐことができる人だけが選べる働き方」というものに変わりつつあります。
加えて、今や会社に雇用されている人でも、フリーランスのように会社に頼らず個人のスキルで稼いで働くことが求められるようになってきているのです。
代表的な例を見てみましょう。
- 高度プロフェッショナル制度の導入
- エージェント雇用制(雇用契約ではなく業務委託契約の形で会社の仕事を請け負う)
- 副業解禁
このように、会社に雇用されるされないに関わらず、誰しもが個人としての付加価値創出能力を問われています。
それが高ければ時間的自由と高水準の報酬が得られ、低ければ時間的拘束と低水準の報酬に甘んじなければならない時代へと変化しつつあるのです。
その究極系がフリーランスであり、フリーランスだけが特殊な存在というわけではなくなりつつあるのです。
そして、これから定年を迎える大勢のシニア層が、定年を機に引退するのではなく、長い定年後を豊かに暮らすためにフリーランスとして仕事をし始めると予想されています。
また、そうした流れを見越して、2拠点居住や、選択的週休3日制、もしくは早期退職をしたりして段階的にセミリタイアを進めつつ、フリーランスとなる準備を早めに開始する人が増えてきています。
さらに、テレワークで仕事をしたいと考えるフリーランスを積極的に支援して地方への移住を促進する動きも、多くの自治体で始まっています。
フリーランスは、新しい時代にふさわしい働き方として社会的に認められ、その地位も高まりを見せてきていることがわかります。
<エージェント制を取り入れている企業例>
センチュリー21 不動産エージェント制度
ハウスドゥ 不動産営業の登録型エージェント制度を本格的に開始
東急リバブル株式会社・定年後の「エージェント制度」を新設
フリーランスを巡る制度・支援体制の充実化
フリーランスの社会的認知と社会的地位の高まりを受けて、フリーランスを巡る環境は劇的に改善が進もうとしています。
安心して生活できる時代に
住宅が買いやすく/借りやすくなる
-
フリーランスは社会的信用が低く、住宅ローンの借入どころか賃貸物件の契約すら難しい現実があります。
しかし、フリーランスの社会的認知の拡大によって昨今では契約のハードルは低くなってきており、今後そのハードルがますます下がっていくことが予想されています。
その鍵となるのが、信用スコアサービスの普及です。
信用スコアサービスとは、蓄積された個人データをもとに、その人の信用力を得点化してくれるサービスです。
日々の暮らしの中できちんと信用を積み重ねていけば、信用スコアサービスを利用して、第三者に対して自分自身の信用力を提示していくことが可能になるのです。
これによりフリーランスであっても、住宅購入や賃貸借契約に代表されるような大きな取引を行いやすくなる時代が到来するでしょう。
<信用スコアサービスの企業について知りたい方はこちら>
J.SCORE
ドコモレンディングプラットフォーム
LINEスコア
フリーランスの所得税負担が減る
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また、働き方改革の一環としてフリーランスを応援していこうという政府の意向をふまえ、2020年1月から所得税制の見直しが行われます。
この改正により、フリーランスの所得税負担が軽減されることになりました。
具体的には、会社員・個人事業主・フリーランス問わず共通して、税額の計算にあたり所得から控除することができる「基礎控除額」が38万円から48万円に10万円増えることとなります。
一方、同時に給与所得に対する「給与所得控除」は10万円減り、公的年金所得に対する「公的年金等控除」も10万円減ることが予定されています。
そのためこの「基礎控除額」が増えるのは実質的にフリーランスのみとなります。
それが、今回の税制改正が「フリーランス優遇税制」といわれる理由です。
もうひとつ、フリーランスの所得税に関して重要な変更が予定されています。
2020年分以後の所得税申告について、青色申告特別控除の見直しが行われる予定なのです。
今までは、正規の簿記の原則に基づいて取引を記帳していれば65万円の控除が受けられましたが、その額が55万円に引き下げとなります。
ただし、次のいずれかの条件を満たしていれば、従来通り65万円の控除を受けることが可能になります。
- その年分の事業にかかる仕訳帳及び総勘定元帳について電子帳簿保存をおこなっていること
- その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと
このように、きちんと経理の体制を整備して、きちんと確定申告を行っているフリーランスであれば、所得税負担が重くなるということはありません。
社会保障にまつわる不安を減らしていける
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フリーランスが抱える大きな悩みとして「もしものことが起きた時が心配だ」というものがあります。
そうした「もしも」の時に支えとなってくれるのが様々な社会保障制度です。
しかし、会社員のための社会保障制度が手厚いのに比べて、フリーランスを対象とした社会保障制度は比較的手薄であるといわれています。
【もしもの時:病気、ケガ】
健康を損なってしまった時の備えとなるのが健康保険です。
会社員であれば、会社が用意してくれる健康保険に加入することができます。
健康診断(人間ドッグ)をはじめ福利厚生も充実しており、そのうえ、健康保険料は会社が半分負担してくれます。
一方、フリーランスの場合は原則、みずから国民健康保険に加入しなければなりません。
会社が一部費用負担してくれるということもないので、会社勤め時代と比較すると保険料の負担も大きくなります。
そのうえ、国民健康保険には傷病手当金(所得補償)がないので、重い病気やケガで働けなくなってしまったとしても収入が補填されることもありません。
そして、労災保険もないので、仕事の関係で病気やケガに見舞われたとしても、お金は支給されません。
そんなフリーランスでも、しっかりと対策を取れば、コストを抑えつつ充実した社会保障を受けられるようになります。
【きちんと青色申告をする】
まずは、青色申告で確定申告を行うことが一番大事です。
青色申告特別控除によって、健康保険料の金額の算定のもととなる課税所得を抑えることができます。
職種別の国民健康保険組合への加入が可能かどうか調べてみる
保険料は所得水準によって変化するため一概にはいえませんが、職種によっては、国民健康保険よりも保険料が安い健康保険組合に加入できる場合もあります。
フリーランス向けの有名な組合は「文芸美術国民健康保険組合」です。
ただ、入会には一定の条件がありますので、まずは自分が入会可能かどうか調べてみることをお勧めします。
【自前で民間の任意保険にも加入する】
国民健康保険だけでも負担が大きいのに民間の任意保険にも加入するのは大変なことではありますが、フリーランスこそもしもの時のための備えをしておくことが重要です。
昨今では、フリーランス向けに特化した保険商品や福利厚生サービスが続々と誕生していて、フリーランスが加入できる所得補償保険も登場してきています。
比較的リーズナブルに加入できるものも多いので、まずは一度調べてみることをお勧めします。
<フリーランス向けの保険、福利厚生サービスはこちら>
フリーランス協会ベネフィット|フリーランス協会
フリーランス協会の所得補償制度について
ITフリーランス向け福利厚生プログラム「フリノベ」|ギークス
フリーランス向け福利厚生サービス|ランサーズクラブオフ
【もしもの時:老後、長生き】
フリーランスにとって老後の不安は大きいものですよね。
いくら定年関係なく自分の腕一本で稼ぎ続けられるとはいえ、いつまでも健康なままパフォーマンス高く仕事を続けられるかどうかは分かりません。
フリーランスの場合、会社員以上に年金だけでは老後資金が不足する可能性が高いので、自分自身でしっかりとした蓄えを作っていくことが重要です。
会社員は国民年金に加え、厚生年金にも加入することとなっており、おまけに年金保険料は会社が半分負担してくれます。
会社によっては、その上に厚生年金基金や企業型確定拠出年金を積み増しているような会社もあります。
一方フリーランスは、厚生年金には加入できなくなり国民年金のみの加入となります。
そして、毎月決められた額の国民年金保険料を全額自己負担で支払っていくことになります。
そして、国民年金のみに加入している状態となるわけですから、やがて受け取れる年金の金額も会社員に比べるとずいぶんと少なくなってしまいます。
ただしそんなフリーランスでもしっかりと工夫すれば、きっちりとした老後の備えを用意することができます。
【自分で年金を積み増す】
フリーランスでも、付加年金制度や国民年金基金制度を利用して追加で年金保険料を支払って、将来受け取れる年金額を増やしていくことができます。
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入して、拠出した掛金を運用しながら年金額を増やしていくこともできます。
積立金は全額所得控除対象となります。受け取るときも受け取り方によっては公的年金等控除を活用できます。
節税効果も高く、運用によっては将来の受取額を増やしていくことも可能ですので、フリーランスの年金資産形成のための有力な手段となります。
【小規模企業共済に加入する】
小規模企業共済とは、フリーランスも加入できる退職金制度です。
毎月一定の掛け金を支払うかわりに個人事業を廃業した時などに共済金を受け取ることができる仕組みです。
掛け金は全額所得控除できます。受け取るときも受け取り方によっては公的年金等控除を活用できます。
加えて、小規模企業共済に加入することで低金利の貸付制度も利用できるようになるので安心です。
フリーランスの強い味方であるといえるでしょう。
安心して取引できる時代に
フリーランスの立場が強くなっていく
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フリーランスは、ビジネスの現場における立場が弱く、過剰な負担やリスクを背負って仕事をせざるを得ないような状況に追い込まれてしまうことがあります。
また、フリーランスは誰かから雇用されているわけではないので、一般的に会社員が得られているレベルの保護は受けられません。
仕事時間の制限もありませんし、残業しても残業代は出ません。さらに最低賃金に関するルールもないのです。
一方フリーランスの中には、特定のクライアント企業から継続的に仕事を受注し常駐もしており、事実上そのクライアント企業に直接雇用されているような働き方をしている方も存在します。
このような働き方をしているフリーランスのことは「労働者性がある」「雇用類似の働き方をしている」といえます。
あるクライアントに不当に縛られて、事実上他のクライアントとの仕事ができない状況に追い込まれてしまうようなケースもあります。
それはたとえば、以下のようなケースです。
- 過大な秘密保持義務や競業避止義務を課せられる
- 合理的に必要な範囲を越えて専属的に働くことを要請される
- あるクライアント向けの成果物をベースに妥当な範囲で他の仕事に転用することを不当に制限される
また、以下のような事例で、フリーランスが自由に取引先を選ぶことを阻害するようなケースについても問題視されています。
- 発注側が業界内で結託して、お互いが発注しているフリーランスの引き抜きをしあわないよう取り決める
- フリーランスへの発注金額を低水準・同水準にすりあわせる
こうした問題に対して公正取引委員会は、2018年2月に「人材と競争政策に関する検討会」として報告書を出し、明確な方向性を打ち出しました。
これにより、優越的地位にある発注者によってフリーランスが不当に縛られてしまうような状況がなくなっていくことが期待されています。
このような社会的変化もありますが、フリーランスが身を守るための最大の武器となるものは、やはり「契約」です。
仕事にまつわる取り決めを予め明文化しておくことにより、何か問題が生じた時に不利益を被るリスクを減らし、安心して仕事に打ち込むことができるようになるわけです。
しかし、発注側もフリーランス側も、手間もかかり知識も必要とする契約の締結を避ける傾向があり、契約書を交わして仕事を行うケースは実際には少ないといわれています。
これでは何か起きた時、立場が弱いフリーランスの方が不利益を被る可能性が高くなってしまいます。
こうした課題をふまえて、フリーランスの契約を積極的にサポートしてくれる法律事務所を検索できるサービスや、AIで契約書を生成してくれるサービスが続々と誕生してきています。
こうした流れを受けて、近い内にフリーランスがスムーズに契約で身を守ることができる時代がやってくることでしょう。
<フリーランス向け法律支援サービス>
ココナラ法律支援|フリーランス・個人事業主に強い弁護士
弁護士ドットコム|フリーランス 契約
AI-CON|AI契約書リーガルテックサービス
インボイス制度が悪影響になるとは限らない
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現在、消費税制において、フリーランスの未来に大きな影響を及ぼすと言われている制度変更が予定されています。
2019年10月に消費税率の10%への引き上げが行われ、あわせて軽減税率制度の導入が行われる予定です。
この軽減税率制度の導入に関連して、
2023年10月以降、適格請求書等保存方式、通称「インボイス制度」が導入されることになっています。
消費税は、売上とともに預かった消費税額から仕入において支払った消費税額を控除した額が納税額となりますが、年間売上が1,000万円以下のフリーランス・個人事業主は消費税の納付が免除されています。
「フリーランス白書 2019」によれば、世の中のフリーランスの87.5%は年間売上1,000万円以下です。
つまり、ほとんどのフリーランスが消費税の免税事業者であることが想定されます。
一方、2023年にインボイス制度が導入されると、免税事業者であるフリーランスは発注側が消費税の仕入税額控除をする際に必要となる「適格請求書」を交付することができません。
そのため、発注側がフリーランスに対して支払っている消費税分の税額を納税する必要が出てきます。
それは、クライアント側の負担が増えるだけでフリーランス側の負担は増えない、という見方もできます。
しかし、クライアント側が免税事業者であるフリーランスとの取引を避けたいと考える可能性が出てくることが予想されています。
そうして取引を失ってしまうようなことにならないよう、フリーランスとしては、以下のことを目指していくことが大事です。
- クライアントから「消費税負担をしてでも取引したい」と思ってもらえるフリーランスになる
- 課税売上1,000万円を越えて消費税の課税事業者となり適格請求書等発行事業者として認められる
そうしなければ、以下のような選択を迫られる可能性が出てくることも想定されます。
- クライアント側に転嫁される消費税負担分を値引きしなければならなくなる
- 取引を打ち切られてしまう恐れがある
- (課税売上が1,000万円に満たなくとも)自主的に「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければならなくなる
一方で、課税売上で1,000万円を越えてくるようになると課税事業者となり、適格請求書を発行できるようになるので、企業に
取引したいと思ってもらいやすくなるわけです。
それはつまり、稼げるフリーランスはますます稼ぎやすくなり、フリーランスの世界においても勝ち組/負け組が分かれていくことが予想されるということです。
とにかくひたむきにスキルを磨き、顧客のニーズに応え続けられるよう変化を続け、年間売上1,000万円超を目指していきましょう。
おわりに ~自分自身の努力が最重要~
フリーランスを保護・支援してくれるような制度や支援サービスは今後も続々と登場し、これから5年10年かけて、フリーランスを巡る環境は劇的に改善されていくことでしょう。
しかし一番重要なことは、そうした制度や支援サービスをフルに活用していくためにも、フリーランス自身が以下のことを心掛けることです。
- 学習を続ける
- 経理や事務まわりについてもしっかり取り組む
- 必要な情報を調べ、きっちりと根気よく取り組む
ちゃんとしているフリーランスであればしっかりと保護され、思う存分稼いでいける時代は、もうすぐそこまでやってきています!
前向きに仕事に取り組んでいきましょう!
注記
本記事は2019年8月時点の情報に基づき作成されています。
最新の制度については、必ずご自身でご確認頂くことを推奨いたします。
また、制度に関する詳細にまつわる専門的な判断については、専門家に相談することを推奨いたします。
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