by大村昂太朗
管理職研修を企画するヒント集!テーマ設定から研修後の評価まで徹底解説
管理職研修とは、企業の要となる管理職を育成し、成果を上げるために実施されるものです。しかし、人事として以下のような疑問は尽きません。
-
どのような観点で研修をおこなえばよいのかわからない
-
環境が変化していく中で管理職にはどのような役割を担ってもらえばよいのか
-
どのような形の研修がベストなのか
このような悩みを解決するために、管理職研修の目的や実施するポイント、事例などについて詳しく見ていきます。
管理職研修を企画する際はぜひ参考にしてください。
目次
管理職研修の目的
管理職研修は、管理職として以下の要素を学ぶために実施されるものです。
- チームをまとめる
- 企業としての成果を出す
- 意識の共有
特に、新しく管理職となる場合には、リーダーとして必要な意識や考え方、スキルなどの基礎を身につけてもらうことが大切です。
また、管理職に求められる能力や意識は時代の流れによって変わっていきますので、定期的な管理職研修の開催が必要といえます。
それぞれの要素を詳しくみていきましょう。
チームをまとめる
管理職はチームをまとめる役割を担います。コミュニケーションスキルに加えて、さまざまな働き方や姿勢を持つ人材の能力を把握し、生かすための考え方を学んでもらいましょう。
また、管理職となれば、一般職とは意識を変えなくてはなりません。
- 誰かに指示されるのではなく、自分が人に指示を与える
- 部下と上司という意識を持つ
このようなことも含めて、チームをまとめていく意識を共有します。
企業としての成果を出す
管理職となった社員は、一社員としての働きだけではなく、部下を管理して企業の成果につなげる必要があります。管理職に求められるのは、業務における成果です。
そのためには、以下の事柄などに取り組み、部下となる社員のパフォーマンスを引き出すことが求められます。
- 社員の能力の正当な評価
- 社員のモチベーションの向上
- 社員の心身状態の確認
管理職次第で社員のモチベーションは大きく変化するため、社内では「管理者」として評価されることも共有しておきましょう。
意識の共有
業務をおこなう上では、社員間で意識の共有ができていることが非常に重要です。
企業におけるビジョンや価値観を社員にうまく伝え、中長期的計画を具体的な業務に落とし込んで実行に移せるかは、管理職次第ともいえます。
人事は管理職研修を通して、そういった考え方を意識づけていきましょう。
管理職研修の企画と全体の流れ
人事が企画する管理職研修は、企業の業務内容に合わせておこないます。
どのような業種・職種でも、管理職における役割は変わらないものの、実際の業務に合った形に調整することが不可欠です。
そのため、管理職研修を通じて実現したいことや、身につけて欲しいスキルや知識をきちんと定め、実施していく必要があるでしょう。
では、どのような流れで研修を実施すればよいのかを見ていきます。
研修実施までの流れ
管理職研修を実施する場合、まずはテーマの選定からスタートし、具体的な内容や目標を設定、その後の評価まで考慮しておくことが大切です。
研修のテーマを決める
研修のテーマを決める際は、研修実施者と計画者が相談しながら進めていきます。
代表的なテーマとしては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 管理職入門(基礎)
- リーダーシップ
- マネジメント
- チームビルディング
- コーチング
- 目標管理
- コミュニケーション
- メンタルヘルス
こういった大枠の方向性から、具体的なテーマの選定に落とし込んでいきます。もちろん、複数のテーマを組み合わせることも可能です。
具体的な内容を決める
仮に「人材育成の方法」をテーマとした場合、それに沿って具体的な内容を決めていきます。たとえば、
-
社員をどのように評価するか
-
人材育成に必要なコミュニケーション
-
適性に合わせた人材配置とは
など、必要な内容を細分化して検討します。
研修の実施スケジュール(数回に分けて実施するか、一回で集中して実施するか)なども、事前に決めておきましょう。
期待する目標を決める
さらに、研修によってどのような効果を狙うのかも想定しておきます。
目標とするゴールを定めずに実施してしまうと、思うような効果が得られなかったり、途中でぶれたりする可能性もあります。
実施しただけ、研修を受けただけ、では意味がありません。
具体的にどう業務に結びつけてもらうか、どんな考え方やスキルを学んでほしいか、必ず明確にしてから実施しましょう。
研修の評価方法を決める
研修を実施する際には、その後の経過を評価することが必要です。たとえば「人材育成の方法」をテーマとした場合、
-
社員がどういった意識で業務に取り組んでいるか
-
相談への対応や適切なコミュニケーションがとれているか
-
残業など一部の社員だけに負担が偏っていないか
などの項目は、人事が研修以降に評価しなければなりません。
また管理職研修をおこなった後は、アンケートではなく、報告書やレポートなどの提出を求める企業もよく見られます。
このように、評価項目や評価方法についても実施前に検討しておくとよいでしょう。
研修実施後の評価
研修実施後は、事前に決めた評価方法・項目に従い、その後の変化を確認します。たとえば、新しく管理職になる社員に研修をおこなった場合、
-
実際にどのように業務を遂行しているか
-
業務上の課題を研修内容に沿ってクリアできているか
-
どのていど実施できているのか
など、その社員の上司などがシートを作成することで評価することもできます。
評価方法は、管理職を対象にするだけではなく、関わる全ての社員に対して聞き取りをおこなう方法もあります。
そうすることで、本人の意識と周囲との差や、目標の数値が実際に達成されているかどうかなども客観視することも可能です。
管理職研修における注意点
管理職研修は、テーマに沿ってリーダーとしての意識、新しい知識やスキルを身につけてもらうために実施されるものです。
そのため、研修をおこなったとしても、実際の業務に反映できなければ意味がありません。
研修の内容は企業によって異なるものの、人材育成や生産性の向上などであれば、業種が異なったとしても共通するものはあります。
現場の課題を把握して管理職研修で共有し、改善していく流れが非常に重要になります。
管理職研修は、一度だけで完結するものではありません。
一度の研修で目標が達成できなければ、やり方を工夫しながら、管理職が必要な能力を獲得できるように何回でも実施していく必要があるでしょう。
ただし、考え方や働き方は常に変化していくものであり、管理職研修においても時代に合った学びを提供することが求められます。
管理職研修の具体例
ひとことで管理職研修と言っても、形式は異なります。たとえば、ノウハウ共有と知識・業務内容の習得では内容は同一ではありません。
管理職研修の形式は、大きく3つに分けることができます。
- 社内研修(ノウハウ共有)
- 社外研修、オンライン研修(知識・業務内容の習得)
- 体験型研修(ノウハウ共有・実技実施どちらも含む)
管理職研修においては体験型研修が多いものの、どういった方法が最も効果的なのかを考慮しながら選定していきます。
研修内容の具体例
ここでは管理職研修の中でも、新しく管理職に就く社員に対して、どのような内容の研修を実施すればよいかを紹介しましょう。
まず、管理職として重要なミッションは人材の管理です。たとえば、以下のような内容を総合的に伝えます。
-
どのようなコミュニケーションで人材を育てるのか
-
チームに対してどのような意識づけをおこなうのか
-
信頼関係をどのように構築するのか
そして一般社員から管理職となるため、業務内容に関しても新しい意識を持つ必要があります。
-
生産性を上げるための意識共有
-
目標に対する取り組みを考えて実務に落とし込む
-
適材適所の役割を考慮する
人材管理と業務内容は、企業の利益や生産性に大きな影響を与えるものです。管理職次第で社員のやる気やスキルアップにもかかわるため、上記のような意識づけが大切です。
管理職に求められる業務は、人材の管理や業務に対する取り組みだけではなく、情報管理や部下の精神面のフォローなども含まれます。たとえば、
-
どこまでの情報をどのように扱ってよいのか
-
社員の心理状態の確認
-
業務内容の人材への負担に偏りはないのか
なども管理職研修の研修内容に含みましょう。
管理職研修の成功事例
ここでは、実際に成果を上げている管理職研修の事例をみていきましょう。
成果を上げている研修内容を知り、自社の研修内容と比較することで、研修内容を洗練していくことが可能です。
コクヨ
コクヨ株式会社で人事が実施している管理職研修は、現場と経営層をつなぐ課長職の人材育成に力を置いたものです。
2012年よりスタートした「GLワークショップ」の目的は、現場のマネージャーを支援しグループとしての戦略実現を推し進めることと、チームとして継続的に成果を出し続けることの2点でした。
その研修内容は、
- 講義形式メインではなく、実際の職場で抱えている問題や課題を取り上げる
- 各現場で培ったノウハウを互いに共有し、意見交換をしながら解決を目指す
- マネージャーの役割とは何かを認識するところから始まり、自部署の本質的な課題の設定と解決、部下育成について取り組む
- ワークショップと職場での実践を繰り返す
といったものです。
研修の結果、管理職と部下に一定の信頼関係が構築された点は大きな成果と言えるでしょう。
- 部下がしっかりと指示に従う
- 管理職の発言を部下が真剣に考える
- 責任を持って取り組む
信頼関係のない言葉のやり取りでは信頼関係がなければ、このようなことも難しいといえます。
なぜなら、部下の意識が変わることもなく、改善につながる行動も考えられないためです。
ちなみに同社では、管理職だけではなく、企業として徹底した研修をおこなっています。
また、新入社員から3年目に至るまではフォロー研修を繰り返しており、徹底した研修体制が企業の成果に直結しているといえそうです。
サントリー食品
サントリー食品インターナショナル株式会社で実践したのは、人材育成に関する3日間の管理職研修です。
この研修では「心からワクワクするビジョンの発見」をコンセプトに、
-
普段関わりが少ない同世代と答えのない課題と向き合い、意見交換をおこなう
-
自分はどのように動きたいのかを発見する
といった内容が実施されました。
その結果、管理職の部下に対するフォロー姿勢や関わり方が大きく変化し、社内の空気が変化したそうです。
また、自分を深く知り本当にやりたいことを発見する人も増えました。
企業として、売上や目標の数字を達成するために取り組むことも必要です。
しかし、働く社員のやる気やモチベーションなどは、二の次になっているケースもあります。
同社の研修ではこういった面を重視し、個人の考え方や個性、相互のコミュニケーションを大切にし、現場の成果にもつなげたのです。
まとめ
管理職研修は、部下の管理に必要な情報の共有や、業務の知識を身につけることだけが目的ではありません。
研修の内容をふまえたうえで、研修後にはどのような効果があったのかを企業として管理していく必要があります。
特に、人材育成や個人の考え方に関しては、企業として上手く活用できていないことも少なくありません。
そういった場合、社内だけでなく、社外研修などを選択肢として考えることも必要かもしれません。実施から内容の設定、評価にいたるまで、研修の効果を想定しながら実践していきましょう。
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