by大村昂太朗
【社労士解説】テレワークや休業中、感染症にかかってしまった際、副業はどうすればよいのか?
現在の社会の状況の中で、テレワークを導入したり、休業になったりしている企業も多いことと思います。
従来から、テレワークが社会的に進展することが、副業が広がるためには必要だと言われていました。そういう意味では、副業をおこないやすくなってきているとも言えます。
今回は、社会保険労務士の松井勇策が、テレワークや休業と副業との関係について整理します。
※今回の内容はあくまで原則論です。勤め先の企業によって、休業やテレワークと、副業をおこなうことについては様々な考え方があると思います。不要な対立を起こさないためにも、まずは「よく相談する」ことを大切にしてください
【プロフィール】
松井勇策(社会保険労務士・公認心理師・Webアーキテクト) フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表。副業/複業・リモートワーク・上場対応・AI化支援・社内社外ブランディング・国際労務対応など「新しい生き方・働き方の確立の支援」を中心に、社労士や心理師として活動している。著作等も多数。
名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングに従事、のち経営管理部門で法務・上場監査・ITマネジメント等に関わる。その後独立。東京都社会保険労務士会役員(支部広報委員長・研修/広報委員・労務監査責任者等)
目次
テレワークや休業中などの副業について
休業になったり、テレワークの形で働いたりする方、また感染症に関係した形で、以下のような副業についての相談が多くなってきています。
- 休業中に副業をおこなって良いのかどうか?
- テレワークで待機しているだけの時間がある。こういう時間に副業をおこなって良いのか?
- 感染症で休んでいて体調が良くなってきた時には副業をおこなって良いのか?
この3つは法律的・労務的に見るとそれぞれ違う問題があるため、以下、解説していきます。
休業中に副業をおこなって良いのか?
勤務先の企業が休業になった場合、時間が空いてしまうことになります。その間に副業をおこないたいと思うこともあるでしょう。
原則としては、会社が休業している時や、休みの日に個人がおこなうことは自由だとされています。当然、この自由であるということの中には副業も含まれます。
なぜならば、会社には業務命令権がありますが、それはあくまでも「業務」に関してであって、業務以外の私生活についてはその命令権は及ばないと考えられるからです。
禁止している企業もある
しかし企業によっては、休業中だけでなく、通常の休日にも副業を禁止していたり、副業に許可制を設けていたりといった企業も多くあります。
企業が副業を制限するのは、主に下記のようなことをリスクとして禁止している場合が多いです。
- 企業の持っている業務のノウハウが副業をすることで漏れるリスクがあること
- 業務上の機密など、社員として負っている守秘義務に違反する可能性があること
- 副業の業務が重くなってきた時に、本業の仕事に影響が出てくると考えられること
これらの理由やその正当性については、本業の仕事の内容や企業の方針によって異なるので、一概にどの程度までこの理由によって副業を制限して良いのかは何とも言えません。
しかし、現在の法律や裁判の判例では、原則として、休日に本業とあまり関係のない副業を禁止することはあまり合理性がない、禁止することはできない、という傾向になっています。
副業を禁止している企業で働かれている方で副業をおこないたい場合は、こうした社会の傾向も踏まえ、会社が禁止している理由も尊重しつつ、よく話し合うことが必要だと言えます。
「一時的な休業」であることは関係があるか
休日に副業をおこなうことと違い、休業が一時的なものだと企業から言われている場合は、どのように考えたらよいのでしょうか。
この場合も、本業の会社の仕事が始まったら戻れるような形にしておく必要はあると思いますが、私生活を自由に使ってよい、という原則は変わらないものと考えられます。
また、企業から「休業中の過ごし方」などといった形で、生活の仕方について指示が出ている方もいるかもしれません。
企業側にも様々な考え方があると思いますが、こうした場合であっても休業中は労働をしているわけではないので、全てに関して指導ができるわけではないと考えられます。
所属されている企業とご自身の希望をよく話し合ってみるのが良いと思います。
テレワークでの待機時間に副業をおこなって良いのか?
テレワークをおこなう企業が多くなってきました。テレワークだと職場にいませんので、空いた時間などに他のことをおこないたくなることもあると思います。
副業ですと短時間で切り分けておこなえる仕事もあるため、テレワークの空き時間に副業をおこなって良いのかどうか、という質問が出てくるのだと思います。
法的には、こうした時間に副業をおこなうことは認められません。
雇用契約というのは、一定の時間に企業の指示に従って働くことを約束する契約ですので、空き時間があるとしても、企業からの指示に基づいた行動をすることが求められるものだと言えます。
よって、特別に許可された、などという事情がない限り、勤務時間中の空いた時間に副業をおこなうことは認められないものと言えます。
黙って副業をおこなっていることが会社にばれてしまった場合、懲戒処分などの形で会社から懲罰を受けることもあり得ます。よく注意するようにしてください。
テレワークだと生産性が示しやすいとも言われている
前の項目に関連しますが、テレワークですと何らかの形で仕事の成果を送ったり、共有しながら進めることになりますので、仕事をおこなった量や質が示しやすくなるというのはよく言われることです。
こうしたメリットを利用して、ご自身の仕事の成果をアピールしたり、キャリアアップに繋げやすいものだと思います。
空き時間に副業をおこなうかどうかを考えるよりも、勤務先とのコミュニケーションを増やして、社内でのキャリアアップに繋げていくことを検討してみたらどうでしょうか。
感染症が治りかけてきたら副業をおこなって良いのか?
病気にかかってしまった場合のケースになります。
特に現在、コロナウィルスの感染症が広がっていますが、指定感染症と言われる病気にかかると、感染症予防法などの法令によって事業主は仕事を休ませなくてはならなくなります。
働く方も仕事をおこなってはいけないこととなります。こうした状態で、治りかけてきた時期に副業をおこなって良いのでしょうか?
結論から言いますと、前提の説明からも分かるように、病気が治りかけてきた感じがしても治癒したという確定診断がない限り、副業含めて仕事をおこなってはいけません。
まず、健康管理の問題として、病気が治癒したかどうかは自分の主観で決めるのではなく、よく医師に診察してもらい、その指示に従うべきです。
当然、治癒したと認められたら復職することができるようになります。
時間が空いたからといって無理に副業をおこなうのではなく、本業の企業と連絡を取り、仕事ができる状態になったらどうすればよいか、連絡を密にして対応すべき問題だと言えます。
傷病手当金を受給している場合
健康保険制度に、病気で働けない方に傷病手当金を支給する制度があります。
これは企業を通じて申請することができますが、傷病手当金を受給している時には特に気をつけなくてはいけません。
基本的に、病気療養中で仕事ができない方にしか傷病手当金は支給されませんので、副業をおこなうかどうかを検討する余地はありません。
そして、治り掛けに無理をして副業をすると大きな問題となります。
業務をおこなう能力がないことを証明した上で傷病手当金の支給申請をしているわけですので、少しでも業務をおこなっている場合、ただちに不正受給となってしまいます。
発覚した場合に受給が停止されることはもちろん、既に受けている傷病手当金の返納が求められますし、最悪の場合詐欺罪として立件される場合もあります。
勤務先の企業にも大きな迷惑をかけることになりますので、絶対におこなわないようにし、一刻も早く病気を治すことに専念してください。
まとめ
今回は、休業やテレワークと副業との関係で頂いた疑問に対してお応えしました。感染症の流行などで、休業したりテレワークになったりといったことが起こること自体は、社会的にも企業にとっても、働く方にとっても大変なことです。
しかし、特にテレワークが大きく拡大することで、働き方の選択肢が増えることにも繋がってきているといえます。一層主体的に、働く方もご自身の働き方を考えていくことができる機会が増えてきているとも言えます。
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