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副業ナレッジ

by大村昂太朗 大村昂太朗

副業制度を創り活用するために④副業制度における社員の支援制度1

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副業制度構築の各論として、企業における副業制度の構築で注意すべき点について解説する社会保険労務士の松井勇策・解説シリーズ。第4回目は、「支援制度の考え方」について述べています。

社労士松井勇策バストアップ写真

【プロフィール】

松井勇策(社会保険労務士・公認心理師・Webアーキテクト) フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表。副業/複業・リモートワーク・上場対応・AI化支援・社内社外ブランディング・国際労務対応など「新しい生き方・働き方の確立の支援」を中心に、社労士や心理師として活動している。著作等も多数。

名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングに従事、のち経営管理部門で法務・上場監査・ITマネジメント等に関わる。その後独立。東京都社会保険労務士会役員(支部広報委員長・研修/広報委員・労務監査責任者等)

副業制度における社員の支援制度

副業制度における社員の支援制度

前々回までで、最も重要な「副業制度の目的」や「目的を具体化するための方法」について述べ、前回は下記フローチャートの④副業申請手続の設計についてお話ししました。

副業制度における社員の支援制度_フローチャート

副業は、労働者と企業が対等な立場で理想を共有しつつおこなっていくことに意味があります。

そして、企業が副業内容等を監視し審査しようとしても、申請制度が使われなくなり、審査の適正性の確保も難しく、問題が大きいであろうことについて述べました。

また、それによって申請の目的はリスクヘッジや審査ではなく、副業を行う社員の支援を目的とする立場に立つとうまく機能し得ることをお伝えしました。

副業制度の目的が、社員のキャリアの目的が明確化・自立化し、結果的に社員発のイノベーションが起こり、自社の潜在力を大きく向上させることが目的ならば、それぞれの副業がどういう風にその目的に繋がるのかを社員の方が自覚し、企業としては支援をする必要があります。

申請についてはそういった点が重要ですが、さらにその前提として上記の図⑤に当たる、支援策としての情報提供や研修等が非常に重要です。

というより、副業制度においては申請制度が仮になくてもプラスの効果が抑制される度合いは少ないですが、⑤の支援策が行われないと副業制度の目的が実現できる見込みは大きく下がってしまうでしょう。

なぜならば、副業の制度目的(社員のキャリアの目的が明確化・自立化し、結果的に社員発のイノベーションが起こり、自社の潜在力を大きく向上させること等)を実現することは、社員が自由な状態で行い始めた副業を消極的に放置することで、実現できる可能性は極めて低いと考えられるからです。

積極的な情報発信をし、社内で認識を共有していかないと推進できません。目標となる言葉だけを共有しても不十分です。

その支援には何が不足しているのか?

副業制度を設けた企業でのヒアリングの際、社員側でよくお聞きするのが「副業が許可されはしたが、何をやったら良いのか見当がつかない」ということです。

こうした発言は単純に見えて重層的な様々な原因が隠されており、対応策を講じていかないと副業制度の制度目的を達成することはできないといえます。

副業は、本業以外で働けばなんでも副業です。アルバイト雑誌で応募して働けば、もちろん副業でしょう。

しかし通常、アルバイト雑誌に載っている業務に無目的・無作為に応募して、企業あるいは個人の副業目的に近づくことはまれでしょう。

もちろんこのこと、アルバイトの労働価値のことをいっているのではありません。また、目的と設計の上に立って行われる場合、当然大きな効果も生まれ得るといえます。

たとえばデータ処理的な業務で、専門性は高いものの、極端にコミュニケーションが少ない業務があったとします。

こうした業務をしている方で、人とのコミュニケーションの質を上げたり、メンタルヘルス上の目的である程度のコミュニケーションが重要な店舗の店員として副業を行ったりすることなどは、仕事の円滑化や発想を広げることに役立つ可能性があるのかもしれません。

しかし、キャリア設計や状況の判断をなくしてそもそも踏み出せないでしょうし、自身が行っている仕事以外の働き方などへの理解も必要になります。

また、本人の目的意識が根本的に重要でしょう。この事例からも分かるように、副業を活用するためには、多くの知見や視野が必要だと思います。

次は、具体的にどういった支援が必要なのかを見ていきます。

具体的に何を支援するのか?

研修や情報発信を通じて、企業の中でフォローしなくてはならない分野は以下の3つに分類できます。

副業のための制度知識 副業を行うにあたり、様々な行い方、制度や運用に関する知識を習得する
副業内容の知識とスキル習得 自分の今持っている知見やスキルを、副業で使えるものかどうか判断し、意思を持って使えるものにしていく
キャリア設計 自己把握を行い、自由な発想で主体的に、副業含めた自分のキャリア設計を大きく広げるための考え方を身に着ける

これら全ての項目について社員の方の知見が備わっていないと、副業はうまく行うことができないでしょう。

現時点で副業制度がうまく運用されている企業については、上記項目の全てに何らかの理由で社員の方に知見が存在するのだと考えます。

特に、IT/Web関連の起業風土のある企業で、ほとんど管理部門が介在せずに副業制度が非常にうまく運用され、本業と相乗効果をもった社員の成長やイノベーションの母体となっている複数の事例があります。

こうした業界では、風土的に、あるいは育成制度の中で⑴の制度知見が共有され、⑵や⑶については業務の中で事実上身につきやすいと感じています。

IT/Web関連の業界でも比較的、ビジネスモデルが画一的な事業ドメインであり、起業風土の少ない企業では副業制度が機能しない場合があります。これは、⑶をはじめとした知見が身についていない場合が多いと思います。

支援内容⑴ 副業のための制度知識

支援する内容について解説をします。まずは⑴副業のための制度知識です。内容としては、副業を行うにあたり、様々な行い方、制度や運用に関する知識を習得することです。

これは形式的な知識といえるものですが、副業を考えた場合に必ず押さえておかなくてはならない知識です。

例として、以下のような内容です。

  • 副業の形態として、他社での雇用と個人事業主としての業務委託
  • 個人事業主の各論と、税務・法務面の運用
  • 複数社で雇用される場合の社会保険・税務・労務運用
  • 副業における、相互の企業の知的資産権や情報保護、ほか法的な義務

こうした知識は一社に専属する会社員の方は行う場面がないため、知らないか、知っていても不正確な場合も多いと思われます。

さらに、いわゆる「副業ノウハウ」などとして発信されている情報において、不正確な知識が散見されて脱法的な行為を促すものすらみられます。

労務や税務についての正確な制度知識も必要とされるため、研修を行う場合は講師を外部委託する方が知見としての信頼性は高いといえるでしょう。

どちらかというと法務面よりも労務税務の方が重要なため、社会保険労務士や税理士が講師になり得ると思いますが、抽象的な制度論に傾くと意味がなくなってしまうため、副業についての具体的な制度構築やプロセスまで把握している必要があります。

また、知的資産権や情報保護については法務上の高度な知識が不可欠であるため、そういった面に強いことも条件となるでしょう。

研修のような形態のみではなく社内で認識の統一が必要で、マニュアルやガイドラインなどにまとめておく必要が高いといえます。

就業規則よりも運用的な内容が多いため、通常は社内規程とは違った形になるでしょう。

支援内容⑵ 副業内容の知識とスキル習得

2つめは、自分の今持っている知見やスキルが副業で使えるものかどうか判断し、意思を持って使えるものにしていくことです。

⑴の支援内容については重要ではあるのですが、知識は比較的に定型的かつ、企業によっては既に支援を行っているところもあります。

また働く方も、まず制度について自身が知らないということを認識しやすく、たとえば副業を始めようとして「確定申告ってなんだ?」ということを調べたりする方も多いはずです。

どちらかというと、⑵⑶の知見や支援内容は自覚しにくく、支援制度も作りにくいです。しかし本質的に重要です。

企業としても、意識して取り組まないと制度が機能不全になることに直結してしまうものだといえます。

「副業内容の知識とスキル習得」とは、下記の3点を意味します。

  • 副業としてどんな仕事が存在するかを知る
  • 自身のスキルがどのように活用できるかを判断
  • 不足している能力を活用するためのスキルを定義し、埋めていく

副業内容の知識とスキル習得の事例

副業内容の知識とスキル習得の事例

⑵について具体的に捉えるために、中規模の印刷会社で経営管理部という部門に属している社員の方の事例で考えてみます。

業務内容 システムマネジメント、社内業務のマニュアル化、法務業務
経験年数 5年以上
社内での評判 熟練していると見られている
役職 係長級

この方は、いわゆる経営企画業務の財務や戦略業務ではない、バックオフィスのシステムマネジメントや社内業務のマニュアル化、商品関連の側面についてのみの契約管理などの法務業務を行っています。経験は5年以上、社内では熟練していると見られており、係長級の方です。

こうした管理部門におけるゼネラリスト、多職種を包含する役割の方は様々な企業に多く存在します。職務要件定義が希薄な日本型雇用の特色ともいえる現象だと思います。

副業マッチングサイトに、小規模な企業から以下のような単発の副業案件が載っていました。

「広告・印刷・出版会社での商品企画業務・生産管理業務を行ったことのある方に、社内の業務効率促進のためのアイディアを頂きたい。1~2週間に1回で単価○○円」

さて、事例の社員の方はこの依頼案件を遂行できるのでしょうか?

答えとしては、遂行は可能である場合が多いとはいえるのですが、この業務を副業として行うためには多くの壁があり、⑵の「副業内容の知識とスキル習得」が必要になります。

続きと、⑶については次回にお書きします。

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大村昂太朗

大村昂太朗

この記事を監修した人 大村昂太朗 株式会社リアステージ プロシェアリング事業責任者兼プロテンマガジン編集長

2020/4の新卒配属時から一貫して総合人材支援会社、株式会社リアステージに従事。 1年目から新卒周りで事業の立ち上げと責任者を担い、2年目にインターン事業を立ち上げ。3年目のタイミングで新卒から副業領域にキャリアチェンジして、プロシェアリング事業の立ち上げ、責任者を務める。