by大村昂太朗
【人手不足対策】根本的な原因と効果的なこれからの対策
人手不足が深刻な中、従来の採用策を続けていませんか?優秀な人材の採用は、昔から企業にとって最も重要な課題の1つです。
近年では働き方が多様化し優秀な人材の採用が難しくなってきていますが、どうすれば優秀な人材をライバルに先駆けて採用できるのかがわからないため、従来の採用方法を続けざるを得ない企業が多いのも事実です。そこで今回は、
- 従来の採用施策では人手不足が解消されない理由
- 今後の働き方に合わせた新しい採用施策
- 新しい採用施策のメリットと注意点
について解説していきます。
目次
中小企業が人手不足である原因
日本において99%を中小企業が占めていますが、その多くが下記の理由により、人手不足に陥っています。
- 労働人口の減少
- スキルの専門化・高度化
- 採用難度が上がっている
それぞれ、具体的に見てみましょう。
労働人口の減少
大前提として、日本は1995年をピークに労働人口の減少がはじまっています。
国内の出生数の減少も踏まえると労働人口はこれからも減っていくことが予想されます。
スキルの専門化・高度化
ITなどの情報通信業をはじめ、日本の得意分野であったエレクトロニクスの分野に至るまで、世界中の企業との競争が激化しています。
そのため、技術革新や顧客体験の高度化にもとづく付加価値の向上が企業には求められています。
しかし、それを実現できる専門的で高いスキルのある人材は稀なため、採用できる一部の企業を除いて人手不足が慢性化しているのが現実です。
採用難度が上がっている
そのような高度なスキルを持った人材は企業製品・サービスの付加価値に直接結びつきやすいため、各企業での獲得競争が激化しています。
よって、通常の採用経路では採りにくく、採用難度は継続的に上がっています。
人材不足の対策をしなかったことで倒産した事例
帝国データバンクによる2013年〜2018年の人手不足が原因で倒産した企業の調査結果によると、下記のような理由による倒産の事例が複数挙げられていました。
いずれも大まかな流れとして、
という負のサイクルに陥り、倒産した例が多いのが実情です。
中小企業がすべき人材不足対策
採用競争力、とりわけ賃金交渉において大企業に比べて分が悪い中小企業としては、下記の2軸を両輪として同時に対策すべきです。
- 採用施策…優秀な人材を多く、確実に採る施策
- 人材育成…社員のスキルの高度化・専門化のための教育環境の整備
優秀な人材は、自らのキャリアパスや得られる経験・スキルの研鑽の意識が高いです。
そのため、入社後に「この会社では、アウトプットしてスキルやノウハウを吸われたら、何も得るものがなくなってしまうな」と思えば、すぐに辞めてしまいます。
更に優秀な人材ほど行き先がありますので、退職をためらいません。
よって、優秀な人材に長く働いてもらうためにも、採用施策だけでなく人材育成部分との両輪で対策を行うべきなのです。
人材の流出を防ぐ対策
まずは「優秀な人材の流出」を防ぐために、何をしていけば良いかを考えていきます。
大抵の優秀な人材は、極論どの会社に行っても重宝されるような人材です。
なので、仮に転職に踏み切られてしまうと、給与や待遇等で見えない相手と勝負しなければなりません。
その前に、今の会社に残る理由、メリットを伝えていく必要があります。
そのために、下記項目を見直していくのが得策です。
- 人事評価制度
- 就業環境
- 福利厚生
- 働き方
- 無駄の排除
- 合理的な対価や対応
それぞれ見ていきます。
人事評価制度の見直し
人事評価は人事考課とは異なり、会社のあり方を示す公的な評価制度です。
よって、社員からは「人事評価=会社のビジョン」と捉えられますので、なるべく公平なものにする必要があります。
会社が置かれた現状を鑑みて、
- 年功評価
- 能力評価
- 職務・役割評価
などのバランスを調整しましょう。
働く環境の整備
社員が気持ちよく働ける環境と、生産性を最大限発揮できる環境の両面で整備すべきです。
社員の生産性が高いことで有名なGoogleでは、日本法人も含め、オフィスには約30m間隔で20㎡ほどのカフェルームが同じ階にいくつもあります。
社員はカフェルームで、数十種類の飲み物や簡単な食事、お菓子などを無料で入手できます。
そのような施設がある理由は、社員がコンビニやカフェに行くわずかな時間を無駄にさせず、かつ満足度をあげるためです。
このように、優秀な人材の時間あたりの生産性を無駄にさせないことと、満足度を高めるという両面で考える必要があるのです。
福利厚生
リクルートキャリアが2019年に行ったアンケートの「就職先の決め手となった項目」で、「福利厚生」は男性で2位の32.8%、女性は3位で43.6%で、かなり重視されています。
ただ、実際に採用された人は、よほどオープンな環境でない限り採用後でも「福利厚生で決めました」とは言いません。
そのため、採用後に自社の社員に対してオープンに話せる場を用意し、本音をヒアリングすると良いでしょう。
自分たちの会社にいる社員が、どのような福利厚生を求めているか把握しやすくなります。
参考:就活生、入社予定企業の決め手は?(リクルートキャリア)
働き方の多様化を認める
最近は大手企業も積極的に導入しておりますが、働き方の多様化も今後かなり重要視される観点と言えます。
率直に言えば、
- テレワーク/リモートワーク/在宅ワーク
- 副業、複業
これらの導入に積極的になることで、人材流出を防げるケースもあるのです。
勤怠管理や社内のマネジメント体制を整えてリモートワークが認められると、特に介護や育児を伴う働き方に制限のある人にとっては有難いですよね。何より、こうした事情のある優秀な人材を手放す必要がなくなります。
また、副業や複業は解禁することで、優秀な人材の
- 収入を増やす
- 新しいことにチャレンジしたり、人脈を広げたい
- キャリア形成や伸長をしたい
という要望を、離職させることなく叶えることができるようになるメリットがあります。
副業や複業禁止の企業に属する人材が収入を増やすことや今の企業にないキャリア形成を目指すと、新しい企業への転職が解決策となるのは当然のこと。
ところが副業・複業が認められていると、こうした欲求は今の企業に属していながら、副業・複業先で満たせますよね。
企業側としても、各従業員が新しい知見や経験を経て職場で還元してくれたり、様々な人脈や組織に触れることでより柔軟性が強化されたりと、恩恵も多いです。
もちろん企業側としては、
- 勤怠管理の煩雑化
- 機密情報の漏洩リスク
などの懸念材料があるのも事実ですが、リスク管理の整備をすることでヘッジすることは可能です。
特にアフターコロナの日本社会では、「個の時代」が大きく加速していきます。今後の人材不足の市場でも勝ち残っていくために、前向きに検討すべき事項と言えるでしょう。
無駄の排除
また、会社の風土や仕事の流れにおける無駄を見直して排除することも、重要な改善ポイントです。
こちらも一例ですが、
- 定例会議
- 朝礼、終礼
- 稟議書、報告書
- 作業ルール
- 文書の記入ルール
- 朝礼、終礼
- 直行や直帰の禁止
こうした大小様々な無駄な慣習は、多くの企業にあるものです。無駄な時間や工程が多いほど、「考え方が古い」「融通が利かない」といった捉え方をされます。
WEB会議ツールを当たりまえに使うようになりオンラインでのコミュニケーションが活発化して、働き方改革や業務効率化が叫ばれるご時世ですから、そもそも無駄なことはどんどん排除していかないと、社員に見放されてしまいます。
合理性のある対価や対応を示す
- 上司の指示による取引先との業務範囲外の飲み会
- 会社の指示で参加したゴルフコンペ
- 雇用契約書に記載の無かった転居を要する異動
など、こうしたイベントへの半強制参加や、費用の自己負担を求められるケースは中小企業ではよくあります。
しかし「私たちの時代はそれが当たり前だった」という価値観は通じないのが今の時代です。
その時代に適した対応を適切に見定めていくのも、人材流出を防ぐ大切な考え方です。
人材確保の取り組みを行う
ここまで、優秀な人材を手放さないために出来ること、やるべきことを見てきました。
ですが、辞めさせないことよりも更に難しいのは、優秀な人材を新たに確保していくこと。
この人材難の状況でも優秀な人材が入ってくる仕組みを構築できさえすれば、成果面や昇進争いにおける社内の健全な競争が生まれることにもなります。
更には人材の流出を防ぐ施策にも繋がるでしょう。優秀な人材を採るためにはマーケティング同様、
- 誰に
- 何を
- どのように
という考えを前提として施策を行いましょう。まずは、「誰に」を決める母集団形成について見ていきます。
母集団の見直し
母集団形成は定期的に見直しましょう。時代や会社が置かれている立場によって、必要な人材が異なるからです。
具体的には、欲しい人材がいるチャネルを理解し、そのチャネルに集まる人材のペルソナを設定、具体化していくとイメージがつけやすいです。
例えば、優秀な人材は、同じく優秀な人材を知っている可能性が高いです。そのため、現在自社にいる優秀な人材からヒアリングを行い、どこに優秀な人材がいるかを絞る、などの方法を取ることもできます。
最初は母集団を絞りすぎるのではなく、後述する施策をふまえてPDCAを回して少しずつ修正していくと良いでしょう。
求人掲載情報の見直し
「何を」にあたる部分ですが、転職情報大手のリクルートエージェントの調査によると、転職者が転職先を選ぶ際に重視した項目は、
2位:やりがいのある仕事に携われる
3位:新しいキャリアを身に着けられる、成長が期待できる
とのこと。優秀な人材であるほど、精神的な「満足度」を重視します。掲載時にはこれらの情報をより具体的にイメージしてもらえるよう留意しましょう。
参考:【転職者調査】転職の「決め手」となるポイントとは?(リクルートエージェント)
採用経路の見直し
母集団にも寄りますが、一律に面接を…という方法だけが最良とは限りません。
ゲームチェンジャーになりうる優秀な人材がいれば、経営陣や一緒に仕事をする予定の優秀な人材によってアトラクトをかけるなど、臨機応変に採用経路を変えましょう。
採用施策の改善
先ほどのアンケートの通り、応募者側が重視しているのは、
2位:やりがいのある仕事に携われる
3位:新しいキャリアを身に着けられる、成長が期待できる
かどうか、ということ。
しかし、「給与」などと異なり、これらは外からではどうしても見えにくい部分です。
とはいえ、重視されているため、この点を差別化できれば採用競争力を高めることができます。
具体的には、
- 社員インタビュー(取引先へのインタビューも含む)の掲載
- 社内見学(数回の面接後)
- 採用前に副業・複業として携われるようにする
など、採用候補者が働いている自分をイメージしやすいような施策だと良いでしょう。
人材不足対策はコスパが重要
今まで優秀な人材の離職防止と、採用施策について見てきましたが、社内のリソースを考えると、全てを行うのは現実的ではありませんし、何よりコストが多くかかります。
仮に行ったとしても、「採用したが、思っていたより優秀ではなかった」このようなことは必ず起きますし、人の嘘を100%見抜く方法がない以上、未然に防ぐことは不可能です。
よって、ミスマッチはあるものだという前提の元、仮にミスマッチがあっても問題ないような採用施策を行う必要があるわけです。
従来であれば、「優秀な人材は3割」などと社内のそれまでの実情や経験から決め打ちする、ある意味人海戦術のような施策が採られてきました。
必要な人材が5人のところ、それよりも多く採用して、7割の採用者が優秀ではなかったとしても問題ないようにしてきたのです。このような施策の結果、
- 採用コストが余計にかかる
- 予期できなかった新たな採用の必要性が生じた時、採用コストがかけられない
- 結局は社内の残された先ほどの7割の人材で事業を回す
- 結果的に優秀ではないため上手く行かない
- 競争に勝てず利益が少ないため、その後も充分な採用コストがかけられない
という負のスパイラルに陥ります。これらの悪循環を断ち、かつミスマッチがあっても問題ないようにするためには、極論、
- お試し採用
- スポット採用
をするしかないのです。
人材不足対策にはプロ人材を活用すべき
「プロ人材」とは、特定の仕事や業務範囲において、特筆したスキルを有する人材のことで、内閣府の定義する「プロフェッショナル人材」も含めた総称です。
社員として毎日をフルコミットするのは難しいが、持っている専門スキルを活かしたい人を対象として、働き方の多様化に合わせ、国をあげて推奨されています。
これらプロ人材の特徴は、
- リードタイムなしの採用が可能
- 即戦力人材の採用が可能
- 採用コストの削減が可能
であること。今の会社を辞めることなく参加できるため、求職者側のリスクテイクも少なくて済みます。
採用事例を具体的に見ていきましょう。
カスタマーサクセス兼務の人事採用事例
【採用事業者…株式会社Schoo(スクー)】
- 採用職…カスタマーサクセス・マーケティング・人事を兼務したプロ人材
- 採用目的…担当部署の立ち上がり、およびスキルやノウハウを社内の既存社員への共有・教育
動画のオンライン学習サービスを手掛けている株式会社Schooのプロ人材採用事例です。
カスタマーサクセス部門がそれまで社内になく、新しく人材を採用する必要があったものの、当該部門の立ち上げをすぐに行わなければならない状況でした。
とはいえ、普通の採用では、実際に働くまでに今いる会社の退職準備・有給消化があるため、リードタイムがかなりかかります。よって、
- リードタイムを置かずに済む
- 即戦力となる
- 社内の人材の見本にもなる
という点で、プロ人材をすぐに採用することを決めた事例です。
【企業インタビュー】「副業社員は当事者意識を持ってくれるのが一番のポイント」株式会社Schoo様
プロ人材の採用方法
雇用者側からするとメリットが多く利便性の高い採用方法ですが、注意点もあります。それはシンプルに、プロ人材の採用に慣れていないこと。
プロ人材は、従来の採用方法である転職サイトや人材紹介サービスなどにはいない人材です。
そのため、事例を紹介したものの、どのような人材なのか、働いているところがイメージしづらいという方も多いのではないでしょうか。
相手のことがわからなければ、当然、自社にマッチする人材なのかもわかりませんよね。「せっかくプロ人材に頼んだのに、うちにはマッチしなかった」ということが起きる可能性もあります。
そのようなリスクを回避するためにもプロ人材を採用する際は、エージェントに相談してください。エージェントはプロ人材に対して個別に面談を行い、
- どのようなスキルを有しているのか
- どんなキャリア形成を望んでいるのか
などを細かく把握しています。そのため採用後のミスマッチを防ぐことと、可能な限りの早い立ち上がりが期待できるようになります。
その相談が、従来の施策ではリーチできなかった人材を採り、採用競争力を高めるための施策に繋がるはずです。
まとめ
中小企業における人手不足は今後も避けられない課題と言えます。ですが、その中でもやれることはまだまだたくさんあるはずです。
出来るだけ今の会社に居続ける理由を企業側からも作り、今いる優秀な人材の流出を防ぐのが重要です。それと合わせて、新たな人材の採用を工夫していきましょう。
特に人材採用の部分においてはコストパフォーマンスも重視し、プロの助っ人人材の活用がベター。従来の採用活動との併用で、より効果的な人材対策を展開出来る可能性が生まれます。
是非、効果的で実りある人材対策の一助としてください。
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