by大村昂太朗
【これからの働き方vol.5】「ビジョンを大きく明確に掲げるとそれに共感してくれた人が集まって手伝ってくれる」ーートータルでのブランドづくりを行うビスポーク長田敏希氏byプロの副業×BUDDYZ
組織や業界を牽引して活躍するトップランナーには常に大きな期待が寄せられます。しかし、世間の注目の先にあるものはいつも、彼らが生み出す結果であり、「思い」が置き去りになっているようにも感じられます。
そこで、これからの新しい働き方を提唱する「プロの副業」では、学びと交流プラットフォーム「BUDDYZ」と共同で、様々な組織や業界を牽引するトップランナーたちの「思い」にフォーカスしたインタビューシリーズ「これからの働き方」をリリースしています。
活動の裏にある真意、そして彼らの人間性がより広くに伝わることで興味関心が生まれ、「これからの新しい働き方」につながることを期待して。
シリーズ第5回目は、三代目小池精米店「あさひまつ光」のブランディングなどで知られる、ビスポーク 代表取締役CEO 長田敏希氏にインタビュー。
「オーダーメイドのブランディング」として「経営戦略デザイン」を発信する長田氏の、時代に求められるそのスタイルに迫ります。
■長田敏希(おさだ・としき)|株式会社Bespoke 代表取締役CEO
東京農業大学 非常勤講師 ブランドコンサルタント/クリエイティブディレクター
クライアントとの丁寧なヒアリング(対話)を重視しながら、組織の理念作成からBI(ブランド・アイデンティティ)開発、内外に向けたクリエイティブ開発まで、クライアントが対面している状況、市場環境を加味し、企業に合わせた隅々までフィットするコンサルティングを提供。世界三大広告賞のカンヌライオンズ、The One Showをはじめ、D&AD、NY ADC、iF デザイン賞、グッドデザイン賞、毎日広告デザイン賞など国内外の受賞多数。テレビ朝日「嫉妬に身を焦がすBAR」出演
【インタビュー:Mr.BUDDYZ ビットコ】
オーダーメイドの経営戦略デザイン
デザインとの出会いが何だったか覚えてますか?
中学の美術の先生に褒められたのがきっかけですね。あんまり褒められない人生だったので調子に乗って、ハマっちゃったわけです。それで「美術の高校があるよ」って教えてもらったんですよ。あんまり僕は勉強が好きじゃなかったので、美術の方に行こうかなぁと思ったという結構ゆるい感じで、その時は全然将来とか考えていなかったかもしれないです。でも2年生で絵画コースとデザインコースに分かれる時に、絵画の人はもう作家とかイラストレーターとか、希望の進路が明確で。そこで飯が食えないなと思ったんですよね。
やばいぞと。
それで商業デザインっていうのがあるっていうのを知って、美術大学でもそっち側の方を受験しようかなという感じで。色々な所を受けて結局工芸大に入って、授業で読売広告賞っていう新聞広告のコンテストがあるんですね。登竜門みたいな感じで、広告賞の課題が出るんですよ。キンチョーとか。それに対して隣にいる人とチームを組んで応募しろっていうのがあって、それに結構ハマっちゃったんですよね。
ハマりが続きますね!
たまたま隣にいたのが今も一緒に広告の道を進んでいるデザイナーで、盛り上がって泊まり込みでひたすら何百ってアイデアを考えて、先生がチェックしてくれて、自分達が気に入った良いものを1点ちゃんとアウトプットして、パネルに貼って応募するんですけど。その時の『広告ってこんな面白いんだ』みたいなのがきっかけでハマって、その翌年今でもお世話になっている福島治先生の研究室に入る時、また先生が面白い課題を出すんですよね。『愛』っていうテーマで300個、文字を使わずに絵にしなさいと。
とんでもない量ですね。
でもそれが楽しくてしょうがなかったんですよね。期限1週間くらいで、そこでも僕がハマっちゃってたので、500個くらい出して(笑)槇原敬之の歌を聴いたりとか、映画観に行ったりとか、色々な所でヒントを探して。広告っていうアイデアで社会を解決していくみたいなのにハマっていったのが一番初めですかね。
あと、ひびのこづえさんっていう衣装のデザイナーさんの授業もあってそれも結構僕の中でハマって。何か物語みたいなものを読んでその世界観を衣装にして、最終的にその衣装を纏ってランウェイしたんですけど、それもまたハマっちゃったんですよね。これ考えてご飯食べられるって最高だなと(笑)
完全にハマっちゃったんですね。それで広告業界に就職して。
その出会いがあって、ただグラフィックだけでなくて体験で魅せるみたいなのにハマりました。最初に入ったクレオっていう会社は10年いたんですけど、グラフィックよりむしろセールスプロモーションで、お客さんの動線とかどういう風にリアクションさせて手に取らせるとか、そこら辺が面白そうだなと思って。海外の広告もすごく好きで、海外ってそういうのが多いんですよね。体験型の広告というか。
クレオさんでの職種は?
アートディレクターですね。1年目からアートディレクターとして色々な制作会社と連携して、プレゼンしていくみたいなのをすぐにやれたのはすごい良かったなと思います。
他社にいってたら出来なかったかもしれないですね。
お金の管理とかも全部自分でやるんですよ。例えばデザイン費いくら、ディレクションいくらって値付けして、ルーティン的な仕事だと決まっちゃってたりするんですけど、新規で自分達で営業さん開拓した場合とかだと、クリエイティブのボジションの信頼度とかが高ければ、いくらぐらいか聞いてもらえるので、後半は付加価値を高めるために案件少なくても突破できるような価格設定をしたりして。ちゃんと目標の数値があって月のノルマみたいなのがあるんですよ。デザイナーなのに。
制作だけじゃなくて営業面も持っていた。
後半はクリエイティブ視点での営業をするように意識していました。企業さんによってはカメラマンとか「中にいるので写真は自社でやれます」って言われるけど、「こういうアワードをいっぱい獲ったカメラマンがいるので、この人に頼めばいいと思いますよ」「じゃあ一回試してみようかな」みたいな。そうするとこの費用をクリエイティブ費として取れるじゃないですか。質としても良いのが出せるので、デザインもプラスオンで取れるようにしながらも、結構そういうやつはやっていましたね。
クレオさんで10年間経験を積まれて、ビスポークを設立されて。
そうですね、役員が1人居て、あとは基本的には契約っていう形で社員がいます。イメージ的には『ビスポーク』という価値をみんなで高めていく形で、理念に共感する人たちが集まって、このプロセスをみんなが使ってお客様に対して提供していくスタイルです。財務関係からのブランディングアプローチもあるし、人材育成みたいなアプローチもいますし、地域おこしみたいな形で入っているメンバーもいればマーケティング系から入る方もいるんですけど、総合的にブランド戦略をサポートできるような形でチームを構築しています。
ほぼ経営者さんと直でやるんですけど、事業の成り立ちとかどういう風に育ったりだとかそういう対話をして、一緒に成長していけるような関係が一番ですかね。
それで、「Bespoke(=オーダーメイド)」?
話し合いながら靴とかスーツとか作ったり。そういう形でネーミングを作っていきました。僕らとしてはテーラーみたいな形でブランディングを考えていくイメージです。衣装を作って掘り下げて言語化して、看板となるような可視化できるものを作って内部に1回浸透させてから、どういう体験・コミュニケーション・繋がりかを考えていくっていうフローですね。その上でビジュアル展開をする事もあれば、もう1回リメイクとかをすることもあるというような形で。ブランディングって色々な本がありますけど、概論が多すぎてあまり自分に落とし込めない人が多いと思うので、想像しやすく、理解しやすくなるような工夫はしてます。
長田さんといえば三代目小池精米店の「あさひまつ光」などが有名ですが、地方でのお仕事も多いですか?
地方関係の仕事も結構増えていますね。だいたい数十人ぐらいの規模の企業さんで、例えばB to Bのお仕事をされている企業さんがテキスタイルみたいなのを作っていて、基本的にはこれを出しているんだけど「自分達で自社ブランドを作りたい」みたいなフェーズでお話いただくこともありますし、社長の年齢が上がってきて「残りの10年のやりがいを見つけたい」っていう相談も結構ありますね。事業目的から掘っていく新たなビジョン作りというケースもありますし。よくあるのが「ブランディングしたいんだけど進め方がまずわからない」という相談ですね。なので一番初めはゴールをお聞きして、流れを僕らの方で1回作って提案すると。その企業さんによってどこら辺をやりたいか変わってくるので、1回お話しして全体像をご理解いただいて進んでいきます。
例えばアパレルメーカーさんで数十億くらいの規模の会社さんとかは、こういうようなプログラムのステップを作って、社長のビジョンミッションを2時間で3回作りますと。第2階層は、その理念を次期経営層のメンバーに聞いてみて、肉付けしていく感じです。そこで企業の特徴とからしさが見えてくるので行動規範という形で言語化していって、店舗の店長が自らファシリテーションして部下を教育できるようなマニュアルを作っていくサポートも行っています。
浸透させるみたいな。
会社の社長の想いはあるから、「それをどういう風に浸透させたらいいですか」っていうオリエンに対して、まずは社長の想いを言語化して、それをじゃあ浸透させるプログラム作りますっていうインナーブランディングの話ですね。ブランディングを進めるための提案みたいなのは、一番初めですかね。代理店時代はこれ作ってくださいっていう依頼が多かったんですけど。
もっと上流から入ってくる感じですかね。ただのクリエイティブではなくて、経営視点での課題解決。
「経営戦略デザイン」という商標も出願中なんですけど、やっぱりトータルでの企業ブランド作りになると思うんです。自分たちの製造とか販売みたいな所だけじゃなくて、社会にどういうような事業が良い影響をもたらすのかっていうビジョン作りをまずやった上で、それがどう行動に繋がってるのかを明確化するとそれ自体がホームページでどういう風に伝えるかっていうのにすごいリンクしてきて、会社案内での打ち出し方も見えてきます。そこを整理することが実際のデザインの精度に繋がっていると思うんですよね。
ブランド体験
長田さんにとって、今の仕事ってどんな存在ですか。
普通かもしれないけど、生きがいではありますよね。毎回企業さんの話を聞く度にすごい新鮮で、興奮を味わえます。すごい良い材料を持っているんだけどこの使い方を上手くやれば化けるな、お手伝いしたいな、と心から思う企業さんに出会えるのが幸せですね。昨日も駄菓子の老舗で元祖きなこ棒の会社さんにお話を伺ったんですが、元々何代か前の創業者が紙芝居からスタートしているらしいんですよね。紙芝居を聞かせて飴を配って。
ああ、昔近所の!
いま生き残っているのかみたいな歴史にも感動しましたし、駄菓子文化を生かしていきたいみたいな熱い想いを聞かせていただくと、これはもう残したいってなるじゃないですか。毎回コンサルやるとそのまま飲みにいく感じになるんですけど、そこからすごい熱い想いを昨日も深夜まで聴いていました。製造販売とか歴史があることって、同じことをよそで自分達がやろうとしても出来ないじゃないですか。同じ目線でビジネスとしてお手伝いできるのはすごい良い仕事だなって思います。生まれ変わってもまたやりたいみたいな感じですね。
地域によってそれぞれの色があったりとか、老舗の企業さんは特に、全然色が違ったりするのも魅力ですよね。
無理言って、地方の会社でも現地視察をさせてもらうんですよ。工場とか。地域の食を味わってみたりとか。Skypeとかだと便利ですけど、その場に行かないと根元から来れないですから。趣味で旅館とかも好きなんですけど、やっぱりブランド体験ってすごい重要じゃないですか。玄関を入って、もてなしいただいて、出る。その各フェーズを切り取って、どんな体験を顧客に提供するか?良い旅館とか探すの好きですね。僕の好きな旅館は、おかみさんが挨拶しにきてくれて、おにぎり握ってくれてとか、しょっちゅう部屋入ってくるんですけど(笑)
その空気を味わわないと、わからないことがありますよね。
空気感が。そういう対話の部分はありますね。「今回はSkypeで進めていきます」みたいな感じになると、うちのメンバーはちょっとしゅんとしちゃう人が多いですね。やっぱり直に会いたいって。人が好きな感じが皆ありますよね。その人の人生とかに興味あるから、いろいろ話を聞いて、そこから出来たアウトプットが商品だと思って、そこを掘っていくのが好きなのかもしれないですね。
共感するブランディング
働き方について、特に地方に行かれていたりとか老舗の企業さんに会われていたりとかしていて感じることはありますか?
やっぱりなるべくお客様に会いに行って時間を共有する所ことが重要な仕事なので、基本的にはアポが入ります。それで現地視察もあると思うんですけど、基本的にはその中で課題を見つけていくような形で皆進んでいるので、固定の部分で見ないですし、ずっと一緒にいるみたいな形はそこまで重要視しないですね。
自分の会社をやっているスタッフもいるんですよ。今後増えてくるかなと思うんですけど、1個の会社に依存したくないみたいな人も多いと思います。優秀な人ってそういう体質な人も結構多いかなと思うので。
そういう人を確保するのが企業として難しいなら、新しい契約の仕方とか、うちであればブランディングプロセスをフランチャイズみたいに切り売りしていくとか、そういった形も新しいやり方なのかなと思いますね。ビスポークの思想に共感いただいたメンバーが集まって、そのプロセスをお客さんに対して提供するっていうのは変わらないと思いますね。
時間に縛られるのは、個人的には古いのかなと思います。製造会社とかだったりすると仕方ないのかなと思うんですけどね。九州エリアの仕事もあれば東北とか四国とかもあって、その案件によってメンバーが単独で行くケースもやっぱりあるので、デスクにいるよりかは飛び回っていただくっていう形の方が面白いかなって。
これからの10年でイメージされていることはありますか?フードロスの事業も手掛けられていますよね。
1個は先ほどお話しさせていただいた企業の経営者と並走できるようなブランディング部分でサポートできるようなポジションでやっていきたいっていうのと、もう1個はフードロスを含めた社会課題に対して、自分達の経験を使って課題解決が出来ればいいなと思っているので、それを今トライしているのがサルベージパーティ<http://salvageparty.com/>かなと思います。
ごはんフェス®︎<http://honshoku.com/gohanfes>もフードロスに当たる取り組みですか?
ごはんフェス®︎は、日本食とかごはん文化とか稲作文化とかを元気にしたいっていう想いでやっています。ギフト・ショーを運営する会社さんと提携してブースをいただいて、『お米のサードウェーブ』って言っているんですけど、器でも甘酒でもお酒でも、ごはんにまつわる面白い取り組みをされている企業さんをキュレーションさせていただいて、全国のバイヤーさんに紹介していくっていう取り組みを今スタートしています。
イベントは9月ですか?
9月もあるんですが、2月が本番なんです。毎年9月と2月でやっていて、これを継続的にやっていきたいというお話もいただいているので、僕らでブランディングした商品を全国のお客さんに選んでいただくとか、マッチングできるような場として育てていきたいとかっていうのもありますし、どうしてもブランディングした後の販路が課題になるので、そういう武器を僕らとしてもサポートするものが出来るといいなと。
じゃあまだ知られていない、お米にまつわる商品が広がる可能性もあるんですね。
やっぱりブランディングで勉強できてよかったなと思うのが、ビジョンを大きく明確に掲げるとそれに共感してくれた人が集まって手伝ってくれるっていうことですね。こういうイベントも通常だったらすごいお金かかる所を、メリットを感じていただいて一緒にやっていただけるっていうのがかなり良い作用かなと。ただの売り上げとは別に共感いただけるファンを増やしていくっていう。
共感型が主流になりつつありますよね。おそらく会社も理念とか人とか、やっていることの社会的意義に共感するからこそ力が発揮できるという部分はフィーとは別の話として。
よく数字目標みたいな感じはあるじゃないですか。それは企業内では良いと思うんですけど、それよりこの会社が社会にどういう作用をしてくれるのかっていうのが興味あるじゃないですか。そこを言語化してる会社ってまだ少ないと思うので。今そのご依頼が結構増えていますね。
ファンがすごい増えたとか、共感された、共感ポイントが増えたとかっていうのが課題になります。人事評価にも今入れているんですが、作ったビジョンに対してどういう風に行動したか目標みたいな形で両輪があると、より上手くいくかなと思います。
長田さん、貴重なお話ありがとうございました!
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ビスポークHP http://bespoke-inc.jp/
サルベージパーティ http://salvageparty.com/
ごはんフェス®イベントページ http://honshoku.com/gohanfes
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