by大村昂太朗
マーケティングオートメーション(MA)導入の成功事例と失敗事例【日本・海外】
マーケティングオートメーション(MA)は、ヒューマンエラーの抑制や情報管理の効率化などが期待できるため、魅力的に思っているマーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか。しかしMAの導入にはコストもかかるため、できるだけ多くの情報を収集してから意思決定を行いたいところ。
特に、MAを導入した企業の実績や結果は意思決定において非常に参考になります。そこで本記事では、日本と海外でMAを導入した企業による成功事例と失敗事例を紹介します。
<マーケティングオートメーション(MA)記事一覧>
- マーケティングオートメーション(MA)導入の成功事例と失敗事例【日本・海外】(いま読んでいる記事)
- マーケティングオートメーション(MA)の比較と導入時の選び方
- マーケティングオートメーション(MA)とは?導入メリットや選び方まで全解説
MAの成功事例5選【日本国内】
最初に、日本企業がMAを導入して成功した具体例を紹介します。
Pardot(パードット)/ソニー不動産株式会社(現:SRE不動産)
ソニー不動産株式会社は、不動産の売買仲介や賃貸管理を一般消費者向けに提供する企業ですが、事業拡大に伴う反響数増大、プロモーションのPDCAを高速化させる目的でMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……事業拡大に伴い、CPAを下げながら反響数を2.5倍まで一気に引き上げる
- 第二目標……顧客の認知度と理解度を向上させつつ、システム実装及びプロモーションにおけるPDCAサイクルの高速化
実施した施策
Pardotの入力フォーム作成機能を使用し、キャンペーン・セミナーの申し込みとお問い合わせフォーム作成業務の効率化を実施。Pardotのデータソースをマーケティング部門と営業部門が参照しながら、キャンペーンとセミナー業務を進めることに。
結果として足並みを揃えて仕事を進めることができ、反響数は半年で2.5倍に増加して当初の目標をクリア。PDCAサイクルも高速化でき、新サービスの開発期間を1/3の1カ月ほどに短縮することにも成功しています。
Marketo(マルケト)/株式会社ユーザベース
株式会社ユーザベースは、企業活動の意思決定を支援する情報インフラツール「SPEEDA」の提供をメイン事業としているIT企業です。停滞しているインサイドセールスの業務効率を改善するためにMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……契約獲得に向けて実施しているイベントやセミナーのリード精査を含めた集客の工数削減
- 第二目標……人海戦術になってしまっているインサイドセールスの業務効率化
実施した施策
業務効率を改善させるため、Web申し込みやイベントから流入してきた新規リードに対して、Marketoを使用し定期的なメール配信を実施して対応。
MarketoとSlack(スラック)の連携を利用して、顧客に対してアポ取得後のリマインドメール配信や、アポ日程が決まっていない案件については、インサイドセールス向けにアラートを出すことでメールを配信するように工夫しました。
Marketoを導入して業務効率を改善することにより、新たなチャレンジと行うべき施策に着手できるようになったことで、前年の商談数を確保しつつ契約IDの受注率は前年と比べて約5倍の向上に成功しています。
List Finder(リストファインダー)/株式会社ジールコミュニケーションズ
株式会社ジールコミュニケーションズは、Webコンサルティングを通して企業ブランドの最適化を図ることを事業としているWebリスクコンサルティング会社で、顧客管理によるトラブルを解決するためにMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……顧客管理をExcelで行っていたため、各営業担当による名刺登録の漏れの改善
- 第二目標……営業状況更新の効率化
実施した施策
List Finderを導入して社内名刺の一元管理を実施したところ、各営業担当者が明確になり、資料送付の状況や営業状況の整理に成功しました。
商談済の顧客のList Finderを利用して、3ヶ月に1回メールマガジンの配信を実施したところ、既存顧客から新規サービスを複数発注させることに成功。過去に失注した顧客からは返信がもらえて、受注につなげられるようになりました。
BowNow(バウナウ)/株式会社マックスプロデュース
株式会社マックスプロデュースは、社員総会や株主総会をはじめとしたイベントの企画・実施・運用を手がける制作会社です。イベント制作業界共通の課題である「新規顧客獲得」を目指してMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 目標……見込み客の開拓と育成
実施した施策
問い合わせや展示会を通して得た見込み客が、いつWebサイトに訪れてどのような情報を探しているのかという情報のニーズを測定。
社員総会運営担当者が知りたい情報を、ホワイトペーパー化してサイトに掲載しメルマガ配信を行うことで、見込み客から顧客への育成に成功。
Webサイトからの受注数が約3倍、お問い合わせ数が約4.3倍、コンバージョン率が約3.6倍も向上する結果を出しました。
HubSpot(ハブスポット)/東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、電子部品や精密機器といった組立加工系や医薬品・化粧品といったプロセス系、販社・通販といった流通サービス系業界に、生産管理パッケージの開発、販売を行っている会社です。
従来の方法では、新規顧客獲得の成果を挙げられなくなりMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……社内にMAを浸透させること
- 第二目標……MAを使用したマーケティングの実施
実施した施策
HubSpotの正規代理店の支援を受けてWeb担当者の理解を深めたことで、社内体制を変更せずにHubSpotの導入に成功しました。顧客に紙で提出していた資料をPDFに変更してオファーとして流したところ、コンバージョン率の上昇に成功。
サンクスメールを送信することで資料のクリック率が70%上昇して、オンラインでのリード獲得数は80%増え、メールの回帰率を40%まで上昇させるという成果に繋がりました。
MAの成功事例5選【海外】
MAの本場は海外。この章では、海外企業がMAを導入して成功した具体例を紹介します。
HubSpot(ハブスポット)/Viessmann社
Viessmann社は、74カ国で営業活動を展開している暖房・冷凍システムの国際的メーカー
として、太陽、ヒートポンプ、木質燃焼システムをはじめ、クリーンで効率的な石油・ガス加熱ソリューションを提供しています。
Webサイトが検索エンジンで評価されていないため、ユーザーに十分な情報を提供できておらず、併せてエンドユーザーの顧客像も描けていない状況でした。その現状を改善するためMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……検索エンジン最適化を通してユーザーに情報を提供する
- 第二目標……エンドユーザーの顧客像を描き直す
実施した施策
HubSpotを利用してエンドユーザーのペルソナを再定義。ブログや電子ブック/ホワイトペーパーなどのコンテンツを作成し、SEO機能を利用してキーワードを最適化したところ、上位表示に成功。
そしてその結果、顧客の興味・関心をよりよく理解をすることにも成功。
結果的にリードを200%向上、新規コンタクトを毎月500以上獲得できるようになり、過去1年間のブログ訪問者数を900%増加させるという成果を挙げました。
Probance(プロバンス)/Mathon.fr社
Mathon社は、フランスに本社を持つキッチン用品の販売専門会社です。通販サイトでは家電製品、料理器具、カトラリーなど100以上のブランドを取り扱っており、月間のサイト利用者は250万人にも及ぶ企業。
しかし、すべての顧客に同じ内容のメールを配信していたことから、メールマーケティングが顧客の不満を集めているのではと懸念したことがMA導入のきっかけです。
導入した目的・目標
- 目標……メールマーケティングの改善
実施した施策
Probanceを導入してそれぞれの顧客にあったキャンペーンメールを配信するように変更したところ、顧客に最適な提案を適切なタイミングで提供できるようになり、キャンペーンの反応率を10倍に、CTRは4倍に向上することができました。
Mathon.fr社は、1年間で200以上のキャンペーンを実施していましたが、MAを導入することによって業務を自動化でき、担当者1名で運用する体制の実現にも成功しています。
Marketo(マルケト)/Egencia社
Egencia社は、世界で5番目に大きい法人向け旅行代理店です。売上げ向上を期待してMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……新しい需要を生み出すキャンペーンの作成
- 第二目標……マーケティングの効率化
- 第三目標……リードとの信頼関係の構築
実施した施策
キャンペーンを制作してMarketoを使った自動化処理を実行することで、リード管理や顧客との信頼構築に成功。新規アカウント開設数が1.5倍増加して、メールの開封率が38%向上、クリック率も7.8%向上し、多くのユーザーに受け入れられました。
Adobe Marketing Cloud(アドビ―マーケティングクラウド)/Warner Music Group社
Warner Music Group社は、アメリカのレコード会社で世界3大レーベルの1つと言われています。プロモーションを強化するためにMAを導入しました。
導入したMAツール:Adobe Marketing Cloud
導入した目的・目標
- 目標……所属アーティストのプロモーションによる結果の向上
実施した施策
Webサイトを新規構築して、Twitterのハッシュタグを利用したアーティストの人気投票やYouTubeに動画を投稿するなど、コンテンツ作成に注力。
結果としてTwitterは約4,000ツイート、Youtubeの動画は34,000回再生され、チャンネル登録も8,000件されるなど成果を出すことに成功しています。
IgnitionOne(イグニッションワン)/G6hospitality社
G6hospitality社は、アメリカとカナダで1400の宿泊事業(モーテル)を行っている会社です。MA導入の目的はシンプルに売り上げの向上が目的でした。
導入した目的・目標
- 第一目標……ビックデータの理解
- 第二目標……今までアプローチしていなかった顧客層に対してのアピール
実施した施策
PCやスマートフォンのコンバージョン率が50%向上してデジタル収益のシェアも50%の増加を達成しました。
MAの失敗事例5選
前章まではMA導入の成功事例でしたが、この章では国内外の失敗した具体例を紹介します。MAを導入した企業のうち、60%は失敗すると言われています。
導入コストは非常に高いので、失敗しないよう事例から学ぶことは非常に有意義なはず。この章では、その60%のうちの一部を見てみましょう。
Pardot(パードット)/株式会社サイカ
株式会社サイカは、データサイエンスの技術力をもってマーケティングに取り組み、オフライン広告の広告分析ツール「マゼラン」の提供をメインに、マーケティング支援業務を行っている会社です。業務効率化を期待してMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……メーリングリストの効率化
- 第二目標……SFAの連携による業務効率改善
実施した施策
SFAにSalesforceを利用していましたが、MAの運用漏れや運用ミスを起こして、情報を正確な状態に保てませんでした。結果的にメール配信を行う時に目視確認が必要になり、マーケティングの自動化に失敗。セグメンテーションを本来の意図通りに行えておらず、ツールのポテンシャルを引き出せませんでした。
Marketo(マルケト)/レバレジーズ株式会社
レバレジーズ株式会社は、IT分野や医療介護分野を中核とした情報プラットフォーム・人材派遣事業・人材紹介事業を全国展開。その他にもM&Aコンサルティング事業なども展開する多角的な事業活動を行っている会社です。事業拡大のために、既存顧客のリピートが重要と判断してMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 第一目標……新規顧客の獲得
- 第二目標……顧客にマッチしたマーケティングの実施
実施した施策
スコアリングの指標を明確にしていなかったため、無根拠なスコアリングを実施して失敗。このままだとPDCAサイクルを回せなくなると判断して、統計解析を使用したアプローチに変更することになりました。
また、営業とマーケティング、システムの連携が不十分で、顧客側からの問合せに営業担当が回答できない事態が発生しました。
Zoho(ゾーホー)/株式会社ジーニアスウェブ
株式会社ジーニアスウェブは、企業のWebサイトの制作及び運用を中心に集客・ブランディング・採用といった企業が抱える様々な問題解決にサービスを提供している会社です。顧客情報を各担当者が個別で管理していたため、MAを導入して改善を図りました。
導入した目的・目標
- 第一目標……顧客情報の一元管理
- 第二目標……MAを使用する文化を会社に定着させる
実施した施策
散在しているデータの再入力をはじめとしたデータ入力の文化や習慣を、経営側から現場に浸透させることに失敗。顧客の状況が把握できない問題点はMAを導入しても変わらず、競合他社に顧客を奪われる結果になってしまいました。
Eloqua(エロクア)/株式会社ベンチャーネット
株式会社ベンチャーネットは、デジタルマーケティングコンサルティング、デジタルマーケティングツールの開発や販売を中心に事業展開しているIT企業です。マーケティングの自動化を期待してMAを導入しました。
導入した目的・目標
- 目標……MAを利用して業務全体を自動化させる
実施した施策
MAに対する事前知識がなく、MAを導入すれば全ての業務が自動化されると勘違いしていたため、運用初期からつまずいてしまいました。
また、マーケティング部はMAを利用して名刺をデータ化することにより顧客情報の一元管理を行おうとしましたが、営業部に自分の成果である名刺の提出を拒まれてしまい、マーケティング部の意図が営業部に伝わらず、そもそも部署間の連携にも失敗しました。
HubSpot(ハブスポット)/OverGo Studio社
OverGo Studio社は、米国ノースカロライナ州サウスポートにある、インバウンドマーケティング会社です。
導入した目的・目標
- 目標……WYSIWYGエディタを使用したメール配信の実施
実施した施策
配信するメールの原稿であるWordファイルの内容を、HubSpotのWYSIWYGエディタにコピー&ペーストして作成したところ、Wordファイルに入っていたスタイルフォーマットが混入しました。
しかし、HubSpotやGmailの受信トレイではメールにスタイルフォーマットが含まれていても無視されるため、スタイルフォーマットの混入に気づかず招待メールをエンドユーザーに配信してしまい、キャンペーンは失敗に終わってしまいました。
MAの成功事例と失敗事例をわけたもの
MAを導入して成功した例と失敗した例では、何が異なるのでしょうか。結論から言うと、
- 目標のためにMAが本当に最適な手段なのかを予め詰められていたかどうか
- MAの正しい使用法の理解と現場への徹底した文化の浸透
だと思われます。具体的には、成功例に挙げたHubSpotを利用している東洋ビジネスエンジニアリング株式会社と、失敗例に挙げたMarketoを利用しているレバレジーズ株式会社が対照的で分かりやすいですね。
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、HubSpotの正規代理店の支援を受けてWeb担当者を教育。一方、レバレジーズ株式会社はスコアリングの指標を明確化できず、根拠のないスコアリングを実施してMAの効果を全く引き出せずに失敗しています。
上記の2社の事例から、MAを利用する際にはそれなりの学習コストをかけなければ使用法や文化を現場に定着させることが難しいということが伺えます。
MAの事例のまとめ
MAの成功例と失敗例を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。成功例は目標を大幅に超えるほどの成果を出しているのに比べて、失敗例は目標を達成できないどころか競合他社にシェアを奪われているケースさえあります。
導入に大きなコストが必要になるMAですから、絶対に失敗したくないはずです。本記事の成功例と失敗例が、MAの導入の手助けになれば幸いです。
この記事を読んだあなたにおすすめ
<こんな方におすすめです>
- 経営課題にマッチしたプロ人材が見つからず、課題が前に進まない
- ようやく見つけても、高額な年収がネックとなってしまう
- いざ採用して、もしも期待値以下だったらどうしよう、と不安になる
- ピンポイントな専門家を常時活用できるポジションの用意は難しい
- そもそもどんな人材が必要なのかわからない
ハイスキルシェアリング「プロの助っ人」では、年収800万円を超える通常は雇用が難しいハイクラス人材を、必要な時、必要な分だけ20万円~業務委託で活用できる新しい人材活用の形をご提案しています。
人件費はできるだけコストカットしたい。
しかし現状の社内の戦力だけでは経営課題の解決は難しい。
そんなときに「ピンポイントで助っ人に力を借りる」活用が、成長企業を中心に始まっています。
このような経営課題でお悩みの企業様は、是非ハイスキルシェアリング「プロの助っ人」にご相談ください。
関連記事
-
リファラルマーケティングとは?実際の施策実行の順序から成功・失敗事例も紹介
2018.10.12 副業情報
2018.10.12 副業情報
-
あなたは大丈夫?副業詐欺の事例から学んで失敗を回避しよう
2020.03.05 副業情報
2020.03.05 副業情報
-
財務のスペシャリストが副業を通じてキャリアアップする9つの方法
2019.08.23 副業情報
2019.08.23 副業情報
-
【アンケート】これがマーケティング職のリアル!マーケターの本当のキャリアとは?
2019.01.19 リサーチ
2019.01.19 リサーチ
-
副業求人/業務委託:アルバイトの求人アプリを開発・運営している企業で、コンテンツマーケティングの企画担当を募集します!
2021.11.05 副業案件
2021.11.05 副業案件